DDR5メモリ購入ページはボットが91%|DataDome調査「人間1人にボット約10人」3月の6対1から悪化【2026年8月】
本記事にはアフィリエイト広告(Amazon・楽天市場等)のリンクが含まれています。
DataDome調査「人間1人にボット約10人」、2026年3月の6対1から半年で悪化
出典:Tom’s Hardware「DDR5 scalper bots now outnumber shoppers 10 to 1」(2026年8月21日公開)、DataDome脅威リサーチ「Scarcity in DDR5 RAM Fueled by AI Demand Sparks Massive Scalping Surge」(2026年3月公開)にもとづきます。トラフィック比率は特定小売業者を対象にした調査時点のものであり、今後変動する可能性があります。
DDR5メモリを買おうとしてページを開くたびに、在庫が消えたり価格が変わったりして「タイミングを逃した」と感じたことがある方は少なくないはずです。それは気のせいではなく、実際に大量の自動アクセスが同じ商品ページを常時巡回しているという調査結果が出ています。
セキュリティ企業DataDomeの脅威リサーチ部門を率いるJérôme Segura氏は2026年8月、ある小売業者のDDR5製品ページを分析したところ、トラフィックの91%が悪性ボットだったとLinkedInで報告しました。正規の買い物客1人に対しボットのアクセスは約10回という計算です。同社が2026年3月に公開した調査では、この比率は約6対1でした。半年足らずで悪化しています。
この記事では、DataDomeが公開した数字の中身と、そのまま鵜呑みにできない理由の両方を整理したうえで、いま32GBメモリで足りている場合に急いで64GBへ買い増す必要があるのか、これから新規にDDR5メモリを購入する場合に何を優先すればよいのかまで扱います。
目次
報告の中身DataDomeのVPが公表した「トラフィックの91%がボット」の内訳
Jérôme Segura氏は、脅威対策企業DataDomeで脅威リサーチ部門を率いるVPです。同氏がLinkedInで公表した数字によると、ある小売業者のDDR5メモリ製品ページに届くトラフィックのうち、91%を悪性ボットが占めていました。正規の買い物客によるアクセス1回に対し、ボットによるアクセスは約10回という比率です。
この数字は、DataDomeが2026年3月に公開した調査を更新したものです。3月の調査では、複数のECサイトを横断した比率が約6対1でした。今回の91%、約10対1という数字は、それよりさらに悪化しています。比較のための参考値もあります。セキュリティ企業Thalesが公開した「2026年版Bad Bot Report」によると、Web全体における悪性ボットの割合は40%です。DDR5の商品ページにおける91%という数字は、Web全体の一般的な水準の2倍以上にあたります。
Segura氏はLinkedInで、メモリを扱う小売業者は自社のトラフィック分析がおそらく問題を大きく過小評価しているとみるべきだ、という趣旨のコメントも添えています。ボット側が検知をすり抜けるよう振る舞いを調整している以上、通常の解析ツールでは全体の巡回規模を捉えきれない可能性があるという指摘です。
巡回の実態91種類の商品ページを6.5秒に1回のペースで確認していた
今回の91%という数字のベースになっている、DataDomeが2026年3月に公開した調査の中身も見ておきます。同社の脅威リサーチチームは、あるDDR5関連のスクレイピング活動を分析し、1,000万件を超えるリクエストをブロックしました。そのうち1時間分、約5万件のリクエストを詳しく調べたところ、対象になっていたのは91種類の商品ページで、1ページあたり平均551回アクセスされていました。単純計算で、6.5秒に1回という頻度になります。
ほぼすべてのリクエストには、キャッシュされた古い在庫・価格情報を避けて最新の状態を取得するための、キャッシュ回避用のパラメータが付与されていました。アクセスの速度も、大量アクセスとして検知されるしきい値のすぐ手前に収まるよう調整されていた可能性があるとDataDomeは分析しています。人間であれば時間帯によってアクセス量が上下するはずですが、このトラフィックは24時間を通してほぼ一定のパターンを描いていました。
対象になっていた製品も、CorsairのVengeanceやCrucial Pro、Kingston Fury Beast、Lexar Ares、Patriot Viper Venomといった一般消費者向けのDDR5キットだけではありません。MicronやApacerが手がける産業向けメモリ、AmphenolやTE Connectivityが供給するDIMMソケットまで巡回対象に含まれていました。メモリの完成品だけでなく、部材レベルまで在庫・価格を監視する動きがあったことになります。
数字の読み方91%という数字をそのまま鵜呑みにできない理由
ここで整理しておきたいのが、今回の91%という数字の限界です。まず、この数字はDataDomeが調査した1つの匿名の小売業者のみを対象にしたデータです。DataDome自身も、この数字を測定したサンプリング期間や具体的な調査方法を公開していません。すべてのDDR5小売サイトで同じ比率になっているという意味ではありません。
もうひとつ重要なのが、ページへのリクエスト数と実際の購入数は別物だという点です。「トラフィックの91%がボット」という数字は、あくまで商品ページへのアクセス回数の内訳であり、「DDR5の在庫の91%をボットが買い占めている」という意味ではありません。実際にどれだけの在庫がボット経由の転売業者に渡っているかは、この数字だけからは分かりません。
さらに、DataDomeはボット対策製品を販売しているセキュリティ企業です。ボットによる脅威の深刻さを示すデータを公開することは、自社製品の必要性を裏付ける材料にもなります。数字自体の信頼性を疑う理由はありませんが、DataDomeの立場を踏まえたうえで受け止める必要はあります。今回の91%は、あくまで「監視の圧力がどれだけ強いか」を示す数字であり、「品薄の何割がボットのせいか」を証明するものではないという点が、この記事でもっとも伝えたいポイントです。
価格の動きDDR5価格そのものも同じ期間に大きく上昇している
ボットの巡回が激しくなっている同じ期間に、DDR5メモリの価格自体も上昇を続けています。米国市場の価格指数を追跡した調査では、32GB DDR5-6000キットは1年前に平均72ドルでしたが、2026年8月時点では392ドルまで上昇しました。約5.4倍です。128GB DDR5-6400キットは過去最安値の329ドルから、現在は3,399ドルまで上昇しており、約10倍という水準になっています。いずれも米国市場の価格で、日本国内の実売価格とは為替や流通の違いにより単純比較できません。
この価格上昇の背景にあるAI需要とDRAM供給逼迫の詳しい構造、および国内の容量別実勢価格については、当サイトの別記事で継続的に追跡しています。ここでは深く触れず、この記事ではボットと転売の実態に絞って扱います。
小売側の対策単体販売の停止やセット販売でボットを回避する動き
ボットによる監視と転売の圧力が強まる中、小売側にも対策の動きがあります。ノートPCメーカーのFrameworkは2025年11月、転売業者への対抗とDIYエディションを購入する顧客向けの在庫確保を理由に、DDR5メモリモジュール単体の販売を停止しました。米国のPCパーツ量販店Micro Centerは、CPU・マザーボード・32GB DDR5メモリのセット販売を店舗限定・1世帯1点までの購入制限つきで展開しています。
米国のNeweggやAmazonでも、32GBメモリキットをCPUとセットにして単体価格より安く販売するバンドルが繰り返し実施されています。メモリ単体をボットに狙われるより、CPUと抱き合わせにしたほうが、転売業者はメモリだけでなくCPUも一緒にさばく必要が生じるため、狙われにくくなるという理屈です。単体のDDR5メモリよりも、パーツをまとめたセット販売のほうがボット・転売業者にとって旨味が薄いという状況が、価格上昇とは別の角度から見えてきます。
転売の実例定価の約2倍、高騰前の約7倍で転売されたキットもある
実際の転売価格からも、ボットが支えている転売市場の規模が見えてきます。確認された事例では、G.SkillのTrident Z5 Neo 32GBキットが、2025年12月時点でeBay上に836.54ドルで出品されていました。当時の参考小売価格は429.99ドルで、その約2倍にあたります。DDR5の品薄が本格化する前の価格117.99ドルと比べると、約7倍という水準です。
| 時期・区分 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 品薄前の価格 | 117.99ドル | 基準 |
| 参考小売価格 | 429.99ドル | 品薄前の約3.6倍 |
| eBay転売価格(2025年12月) | 836.54ドル | 参考小売価格の約2倍、品薄前の約7倍 |
※出典:Tom’s Hardware「DDR5 scalper bots now outnumber shoppers 10 to 1」。G.Skill Trident Z5 Neo 32GBキットのeBay出品価格を確認した事例です。
グラフィックボードやゲーム機の転売は、2020年から2021年にかけて話題になりましたが、あのときは各メーカーが継続的に再入荷を続けており、時間の経過とともに需要を上回る供給が戻ってくるという見通しがありました。今回のDDR5については、遅くとも2027年より前に大規模な再入荷が見込めるという確定的な材料は、今のところ出ていません。転売価格が落ち着くタイミングを、価格上昇が始まった時期と同じ感覚で見積もると、判断を誤りやすい状況です。
読者の判断ボットの実態を踏まえて、今何をすればよいか
ここまでの内容を踏まえると、DDR5メモリを買おうとしている人が持ち帰れる判断材料は大きく3つあります。
- すでに32GBでメモリ不足を感じている、または新規PCを組む予定が確定している場合
- CPU・マザーボードとのセット販売やBTO完成品の価格が、単体パーツの合計より明確に安い場合
- 購入制限つきの実店舗など、転売目的での買い占めが起きにくい正規の販売経路が見つかった場合
- 現在32GBで快適に使えていて、64GBは「あれば便利」程度の検討段階の場合
- 在庫表示が目まぐるしく変わることに焦って、相場を確認せず購入しようとしている場合
- eBayやフリマサイトの転売価格が、参考小売価格の2倍前後まで開いている場合
総括DDR5メモリの品薄は、価格だけでなくボットの巡回も絡んでいる
DataDomeの脅威リサーチVP、Jérôme Segura氏がLinkedInで報告した数字によると、ある小売業者のDDR5製品ページはトラフィックの91%を悪性ボットが占めていました。人間1人にボット約10人という比率で、2026年3月時点の6対1から半年足らずで悪化しています。91商品ページを平均551回、6.5秒に1回のペースで巡回していたという実態も、同社の3月の調査で明らかになっています。
ただし、この91%という数字は匿名の1小売業者のみのデータであり、サンプリング方法も公開されていません。ページへのリクエスト数と実際の購入数は別物で、「DDR5在庫の91%がボットに渡っている」という意味でもありません。DataDomeがボット対策製品を販売する企業である点も踏まえたうえで、数字を受け止める必要があります。
それでも、DDR5メモリの価格が1年で数倍規模まで上昇し、転売価格が参考小売価格の2倍前後で取引されている実例がある以上、単体のDDR5メモリを狙い撃ちで購入しようとするほど、ボット・転売業者の圧力を受けやすい状況になっています。今32GBで足りているなら急いで動く必要はなく、これから新規に組む場合は、単体メモリの価格だけでなくセット販売やBTO完成品の総額まで含めて比較したほうが、判断を誤りにくくなります。



