MAXSUN、GPUをMCIOでつなぐZ890 Mini-ITX PCを展示|x16スロットをなくす意味とライザーとの違い【2026年9月】
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ライザーでも背中合わせにできるのに、なぜx16スロットを外すのか
出典:VideoCardz(9月の展示)、IT之家(9月の展示)、VideoCardz(6月の基板発表)、ZOL(6月の基板発表)、Cooler Master NCORE 100 Air製品ページ、Intel Core Ultra 9 285K仕様、Tom’s Hardware(PCI-SIG CopprLink)、TechPowerUp(RTX 5090のPCIe接続別テスト)、10Gtek(MCIO 8i×2→PCIe x16変換基板)
中国のPCパーツメーカーMAXSUN(铭瑄)が、中国・蘇州で開かれたIntelの技術・業界向けカンファレンス「Intel Connection 2026」で、GPUを「MCIO」というサーバー向けの小型ケーブル端子でつないだZ890 Mini-ITXワークステーションを展示しました。マザーボードにはPCIe x16スロットがなく、GPUとマザーボードは縦型ケースの中で背中合わせに収まっています。
ただ、GPUをマザーボードの裏側に置く構成そのものは、PCIeライザーケーブルを同梱した縦型SFFケースですでに実現しています。MCIOで変わるのはGPUの置き場所ではなく、マザーボードに長いx16スロットを載せなくてよくなる点と、16レーンを2本のケーブルに分けて別々の機器へ配れる点です。
市販のGeForceやRadeonにはMCIO端子がなく、発売日も価格も決まっていません。いまSFFのゲーミングPCを組むならMCIOを待つ必要はなく、PCIe 5.0対応のライザーで足ります。以下では展示の中身、ライザーとの違い、まだ分かっていない点を順に見ていきます。
目次
要点展示されたのはスロットのないZ890 Mini-ITX機
基板は6月に発表された「MS-Challenger MCIO ITX」のZ890版です。GPUはケーブルと変換部を介して接続されています。MAXSUNは発売日と価格を明らかにしておらず、製品として売る構成ではなくプラットフォームの実演という扱いです。
展示Intel Connection 2026で動いていた構成
展示機はZ890チップセットのMini-ITXマザーボードに、MCIOケーブル経由でGPUを接続したものです。展示プレートの説明は「MCIO形態のSlim ITXワークステーション。長い高性能GPUに対応し、MCIOで空間効率を高めつつ性能は安定。小型AIワークステーション向け」という趣旨で、ゲーミングPCではなくローカルAI用途の小型機として紹介されていました。
組み合わされていたのはCooler Masterの製品で、プレートの表記はケースが「i100 Air」、CPUクーラーがトップフロー型の「Hyper 510」、電源が「V850 SFX Gold」です。Cooler Masterのグローバルサイトには「i100 Air」という名前のケースが見当たりません。ただ、縦に立てた筐体の片側にマザーボード、反対側にGPUを置く形式は、同社の縦型Mini-ITXケース「NCORE 100 Air」と同じです。展示写真のGPUにはIntel Arcのロゴが入っていました。
6月に基板だけ先に発表されていた
MCIO Mini-ITX基板自体は今回が初出ではありません。MAXSUNは2026年6月、Intelと共同でMCIOの普及を進める取り組みとして「MS-Challenger MCIO ITX」と「MS-PC Farm B860I」の2枚を発表しています。MS-Challenger MCIO ITXは既存の「MS-Challenger H810ITX WIFI」と同じ基板レイアウトで、PCIe x16スロットがあった場所にMCIO端子を2基並べたものです。
| チップセット | MCIO 2基の使い方 | 向いている構成 |
|---|---|---|
| Z890 / Q870 | x8+x8、またはx8+(x4+x4)に分割 | GPU+NVMe SSDなど複数の機器に分配 |
| B860 / H810 | 2基をまとめてx16として使う | GPU 1枚にレーンを集中 |
もう1枚のMS-PC Farm B860Iは、PCを大量に並べて運用するPCファーム向けの基板です。MCIO 2基に加えてPCIeスロットを1本残し、リモート管理機能のIPMIやBIOSの強制書き込みにも対応しています。
分割できる理由はCPU側にあります。Core Ultra 200S(Arrow Lake-S)は最大24本のPCIeレーンを持ち、Intelの仕様では「1×16+2×4」「2×8+2×4」「1×8+4×4」の組み合わせに対応しています。普段はx16スロット1本にまとめて出しているGPU用の16レーンを、x8ずつ2つのMCIO端子へ振り分けているわけです。
MCIOMCIOは1本でPCIe 5.0 x8を運ぶサーバー用端子
MCIOは「Mini Cool Edge I/O」の略で、ストレージ業界団体SNIAのSFF-TA-1016規格で定められた基板内部用の高速コネクターです。MAXSUNの基板が使う「MCIO 8i」は74ピンで、1基でPCIe 8レーンを扱えます。PCIe 5.0(1レーンあたり32GT/s)なら、帯域は次のとおりです。
| リンク | 片方向の理論帯域 | MCIO 8iで必要な数 |
|---|---|---|
| PCIe 5.0 x8 | 約31.5GB/s(PCIe 4.0 x16と同じ) | 1基 |
| PCIe 5.0 x16 | 約63.0GB/s | 2基 |
PCIeの規格団体PCI-SIGは2024年5月、PCIe 5.0/6.0(32GT/s・64GT/s)向けの内部ケーブル規格「CopprLink Internal Cable」を公開しており、そのコネクターにSFF-TA-1016を採用しています。想定はマザーボードから拡張カードやバックプレーンまで、1システム内で最長1mの配線です。PCIe 5.0の信号は基板の細い配線では約4インチ(約10cm)を超えると減衰が大きくなるため、サーバーでは基板の配線を延ばす代わりにケーブルで引き回す方式が広がってきました。MCIOはMAXSUN独自の端子ではなく、この流れをMini-ITXに持ち込んだものです。
ライザーGPUを背中合わせにするだけならライザーで足りる
展示を見て「GPUとマザーボードを背中合わせにできるのが新しい」と受け取ると、実態とずれます。展示機と同じ形式のNCORE 100 Airは、長さ240mmのPCIe 4.0 x16ライザーケーブルを最初から同梱しており、普通のMini-ITXマザーボードでもGPUを反対側の面に立てて置けます。縦型SFFケースでは、GPUをライザーで離す構成がすでに標準になっています。
違いは、信号がどこを通ってGPUまで届くかです。
| 項目 | PCIeライザー | MCIO |
|---|---|---|
| 信号の経路 | CPU→x16スロット→ライザー→GPU | CPU→MCIO端子→ケーブル→変換部→GPU |
| マザーボードのx16スロット | 必要 | 不要 |
| GPUを離して置けるか | 置ける | 置ける |
| レーンを別々の機器へ分ける | マザー側の分割機能と分岐ライザーが必要 | ケーブル単位で分けられる |
| 市販GPUとの接続 | そのまま挿せる | MCIO→PCIe x16の変換部が必要 |
| いま買えるか | Gen4・Gen5品とも流通 | 対応マザーは未発売 |
GPUを離して置くという結果は同じで、MCIOが上回るのは「マザーボード側にスロットが要らない」「レーンの分け方が自由」の2点に絞られます。逆に、市販GPUをそのまま挿せる手軽さはライザーのほうが上です。
違いMCIOにして得をするのはどこか
基板の配置の自由度は、この基板ではまだ使われていない
x16スロットは長さ約9cmあり、Mini-ITXの170×170mm基板では端の一辺を大きく占めます。スロットがなくなれば、M.2や電源回路、端子類を好きな位置へ動かせるはずです。
ただ、公開されたMS-Challenger MCIO ITXの画像を見ると、2基のMCIOは元のx16スロットと同じ基板の端に並んでおり、脇のシルク印刷も「PCIE_X16」のままです。既存のH810ITX WIFIの基板を流用し、スロット部分だけを差し替えた作りです。配置の自由度という利点は、専用に設計し直した次の基板で初めて生きてきます。
16レーンを2本のケーブルで別の機器へ配れる
いちばん実用的な違いはレーンの分け方です。Z890版ならx8+x8やx8+(x4+x4)を選べるため、たとえば片方のMCIOでGPUをPCIe 5.0 x8接続し、もう片方からNVMe SSD 2台へx4ずつ配るといった構成が、ケーブルの取り回しだけで組めます。普通のマザーボードでもBIOSのレーン分割(Bifurcation)と分岐ライザーで同じことはできますが、カードを物理的にどこへ置くかまでケーブルで自由に決められるのはMCIOの強みです。MAXSUNがこの方式をゲーミング向けではなく、AIワークステーションやPCファーム向けとして打ち出しているのもこのためです。
Gen5のまま離せても、ゲームのfpsはほとんど変わらない
NCORE 100 Airに同梱されるライザーはPCIe 4.0です。RTX 50シリーズのようなPCIe 5.0対応GPUをつなぐ場合、Gen4ライザーではBIOSでリンクをGen4に固定して使うのが確実で、ゲーム性能への影響は約1%にとどまります(縦置きとライザーの実測まとめ)。MCIOはPCIe 5.0前提の端子なので、変換部とケーブルまでGen5で揃えればGen5のまま離して置けますが、それでfpsが大きく伸びるわけではありません。Gen5のまま使いたいだけなら、Gen5対応のライザーに替えれば済みます。
未確認まだ分かっていない3つの点
展示機のGPUがx16でつながっているかは不明
MAXSUNが公表しているZ890版の構成はx8+x8とx8+(x4+x4)で、2基をまとめたx16はB860/H810版の説明にしか出てきません。CPU自体は1×16に対応しているので不可能ではありませんが、展示機のGPUがPCIe 5.0 x16でつながっているのか、x8なのかは公表されていません。仮にx8でも帯域はPCIe 4.0 x16と同じです。PCIe 5.0 x16を最も使うGPUであるRTX 5090を、PCIeの世代とレーン数を変えて比べたテストでは、PCIe 5.0 x8(PCIe 4.0 x16と同じ帯域)の平均fpsはPCIe 5.0 x16に対して1440pでも4Kでも99%でした。GPUが1本のMCIOからx8でつながっていても、ゲームへの影響は誤差の範囲です(x8・x4で動く場合の影響と確認方法)。
性能の実測は出ていない
展示プレートには「性能は安定」とありますが、ベンチマークやリンク速度の検証結果は示されていません。PCIe 5.0の速度では、ケーブルの品質や長さ、コネクター、変換基板の配線が信号品質を左右します。PCIe 5.0以降、長い配線の途中に信号を整え直す「リタイマー」というチップを挟む設計が増えたのもそのためです。製品化されたあとの実測を待つ必要があります。
GPUへの75W給電をどうしているか
PCIe x16スロットは信号だけでなく、GPUへ最大75Wの電力も供給しています。MCIOは信号用の端子なので、市販GPUをつなぐにはMCIOからPCIe x16形状へ変換する基板が必要で、その基板がスロット分の電力を別の電源コネクターから供給しなければなりません。12V-2×6や8ピンの補助電源をGPUに挿すだけでは、スロット側の電力は賄えません。すでに市販されているMCIO 8i×2基からPCIe 5.0 x16スロットへ変換する基板を見ても、10Gtekの製品は基板にPCIe 6ピン電源をつないで12Vを受け、3.3Vは基板上のレギュレーターで作る構造です。ライザーならマザーボードのスロットから電力が来るので意識しなくて済む部分で、MCIOでは変換部とその電源配線まで含めて設計する必要があります。展示機の変換部がどういう回路になっているかは公表されていません。
影響自作PCユーザーにとって何が変わるか
- 専用設計の基板が出れば、スロット位置に縛られない小型ケースが作れる
- GPUとNVMe SSDなどへケーブル単位でレーンを配れる
- PCI-SIGがPCIe 6.0まで想定した規格で、行き止まりの独自仕様ではない
- 市販GPUには変換部が必要で、スロット分の給電も変換部が担う
- 発売日・価格が未定で、日本での販売予定も出ていない
- ケーブルと変換部の品質で、Gen5の安定性が左右される
ATXやMicro-ATXのPCでは、x16スロットをなくしても得るものはほとんどありません。GPUを挿すだけならスロットのほうが簡単で、対応するケースやカードも揃っています。MCIOが意味を持つのは、基板の数cmがケースの大きさを決めるMini-ITX以下の小型機、それもGPUに加えてSSDや拡張カードへレーンを配りたいワークステーション寄りの構成です。
いまSFFのゲーミングPCを組む人がMCIO対応マザーを待つ理由はありません。GPUを離して置きたいならライザー同梱の縦型ケースを選び、RTX 50やRX 9000をGen5のまま使いたいならGen5対応のライザーに替えるのが現実的です。PCIe x4で外付けGPUをつなぐOCuLinkもケーブルでPCIeを延ばす方式ですが、こちらは本体の外へ出すための端子で、ケース内部でx8/x16を配るMCIOとは用途が分かれます(OCuLinkとThunderbolt 5の外付けGPU)。
おすすめいまGPUを離して置くなら使えるパーツ
MCIO対応マザーは買えないため、同じ「GPUをマザーから離して置く」構成をいま実現できるパーツを挙げます。Gen5のまま離して置きたいならGen5対応のライザーケーブル、これからMini-ITXで組むならライザー同梱のケースが近道です。
まとめまとめ|MCIOはGPUの置き場所より、レーンの配り方を変える技術
MAXSUNのMCIO Mini-ITX機は、GPUをx16スロットではなくMCIOケーブルでつなぐ珍しい構成です。ただ、GPUをマザーボードの裏に置くこと自体はライザー同梱の縦型ケースで実現済みで、展示機と同じ形式のNCORE 100 AirもPCIe 4.0ライザーを標準で付けています。
MCIOで変わるのは、マザーボードからx16スロットを外せる点と、16レーンをケーブル単位で別の機器へ配れる点です。一方で現行の基板は既存品のスロットを差し替えただけで、市販GPUには変換部と給電の工夫が必要、リンク幅や性能の実測も出ていません。サーバーで広がったPCIeのケーブル配線が小型PCにも入ってくる兆しとして見ておき、いまのPC選びでは待たずにライザーで組むのが妥当です。
GPUを離して置くだけならライザーで足ります。MCIOの価値はx16スロットを基板から外せることと、レーンを複数の機器へ配れることにあり、効いてくるのは専用設計の小型ワークステーションです。対応マザーは発売日・価格とも未定で、SFFのゲーミングPCを組むならGen5対応ライザーを選ぶのが現実的です。





