HBFとは?GPUに最大512GBのフラッシュメモリを搭載する新規格をSK hynixとSandiskが発表|HBMとの違い【2026年8月】
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SK hynixとSandiskが発表した初期標準仕様と、HBM・GDDR7・SSDとの違いを解説します
出典:SK hynix Newsroom「SK hynix Unveils First HBF Standard Specifications with Sandisk」・Sandisk公式ブログ「Scaling the Memory Wall」・UCIe Consortium公式サイト・NVIDIA H200公式ページにもとづきます。数値は本記事公開時点(2026年8月5日)の情報です。
生成AIの普及にともない、GPUのメモリ容量と帯域幅を同時に増やす需要が高まっています。そこへ登場したのが、NANDフラッシュを使った新しいメモリ規格「HBF」です。名前がHBM(High Bandwidth Memory)に似ているため、GPUのVRAMをそのまま大容量化する技術と誤解されがちですが、実際の位置づけはやや異なります。
HBFはSSDにも使われているNANDフラッシュを積層し、GPUやCPUの近くへ配置する技術です。初期仕様では最大512GBの容量に対応し、帯域幅は約0.4TB/sから最大3.0TB/sまでの3グレードが定義されています。ただし、HBFは高速なHBMと大容量なSSDの間を埋める、AI推論向けの新しいメモリ階層として設計されたものであり、HBMやGDDR7をそのまま置き換えるものではありません。
この記事では、HBFの仕組みや初期標準仕様、HBM・GDDR7・SSDとの違い、そしてゲーミングGPUへ搭載される可能性について、SK hynixとSandiskの公式発表をもとに整理します。
目次
基礎知識HBFとは|HBMとSSDの間を埋める新しいメモリ層
HBFは「High Bandwidth Flash」の略称で、日本語では高帯域幅フラッシュと訳せます。NANDフラッシュをベースにしながら、従来のSSDよりもはるかに広い帯域幅でGPUやCPUへデータを供給することを目的とした技術です。
現在のAIアクセラレーターでは、演算装置の近くにHBMを配置し、さらに外側にシステムメモリやNVMe SSDを接続する構成が一般的です。HBMは非常に高速ですが、容量単価が高く、GPUパッケージへ搭載できる容量にも制約があります。一方、SSDは大容量化しやすいものの、GPUのすぐ近くに配置されたHBMと比較すると、データを供給する帯域幅や応答速度が不足します。
HBFはこの間に入り、HBMだけでは収まらないAIモデルのデータを、SSDよりも高速にGPUへ供給する役割を担います。SK hynixはHBFを、HBMとSSDの間に位置する新しいメモリ層と説明しています。
規格詳細HBFの初期標準仕様|最大512GB・帯域幅0.4〜3.0TB/s
SK hynixとSandiskがFMS 2026で発表した初期仕様では、8層と16層のNANDダイ積層構成が用意され、容量は最大512GBに設定されています。帯域幅は用途や世代に合わせて3段階に分けられ、約0.4TB/sから最大3.0TB/sまで拡張できる設計です。
| 項目 | HBF初期標準仕様 |
|---|---|
| メモリの種類 | NANDフラッシュ |
| 最大容量 | 512GB |
| NAND積層数 | 8層または16層 |
| 帯域幅 | 約0.4〜3.0TB/s |
| 帯域グレード | Grade1〜Grade3 |
| 接続インターフェース | UCIe |
| 主な用途 | AI推論、AIアクセラレーター |
| 標準化団体 | Open Compute Project |
HBFとプロセッサーの接続には、チップレット間接続規格のUCIeが採用されています。仕様には接続インターフェースと電気特性だけでなく、積層パッケージの信頼性、製造上の指針、ソフトウェアからの入出力方法も含まれます。
なお、0.4〜3.0TB/sという数字はHBF規格が定める性能グレードです。製品として販売されるGPUが必ず3.0TB/sで動作するという意味ではなく、実際の性能はHBFの世代、搭載数、コントローラー、GPU側の設計によって変わります。
構造HBFは普通のNANDやSSDと何が違う?
HBFの記憶媒体そのものは、SSDやUSBメモリにも使われているNANDフラッシュです。ただし、市販のNVMe SSDをそのままGPUパッケージへ載せるわけではありません。HBFでは帯域幅を高めるために設計された専用のNANDダイを積層し、制御用のロジックダイやインターフェースと組み合わせます。
SandiskはCBAと呼ばれる技術を使用し、NANDのメモリセルを形成する部分とCMOS回路を直接接合しています。さらに、最大16枚のダイを積層できるパッケージ技術を組み合わせることで、容量と並列性を高めます。一般的なSSDはPCI Expressを経由してGPUやCPUへ接続されますが、HBFはUCIeを使ってプロセッサーの近くへ統合するため、SSDより短い経路と多数の並列データ経路を利用できます。NAND自体の応答速度をDRAMと同じにするのではなく、多数のNANDダイから同時に読み出すことで、AI推論に必要な帯域幅を確保する仕組みです。
接続規格UCIeを採用する理由
UCIeは、1つのパッケージ内に配置された異なるチップレットを接続するためのオープン規格です。GPU、CPU、I/Oチップ、メモリコントローラーなどを別々のチップレットとして製造し、パッケージ上で組み合わせる用途を想定しています。UCIe ConsortiumにはAMD、Arm、Google、Intel、Meta、Microsoft、NVIDIA、Qualcomm、Samsung、TSMCなどが参加しています。
HBFが独自インターフェースではなくUCIeを採用することで、特定メーカーのGPUだけに依存しない実装が可能になります。SK hynixはGPUだけでなく、CPUを含むさまざまな種類のプロセッサーへHBFを統合できる基盤になると説明しています。ただし、UCIe対応プロセッサーであれば、HBFをそのまま接続できるわけではありません。HBFを制御するコントローラー、データを配置するソフトウェア、メモリ階層を管理する仕組みは別途必要です。
背景なぜAI推論にHBFが必要なのか
HBFが主に想定しているのは、生成AIや大規模言語モデルの推論処理です。AIモデルを学習させる処理では、メモリ容量だけでなく、低遅延な読み書きと非常に高い演算性能が求められるため、学習用途では引き続きHBMが重要です。
一方、学習済みモデルを使って回答を生成する推論処理では、モデルの重みを繰り返し読み出す処理が多くなります。数千億パラメーター規模のモデルになると、モデル全体を1基のGPUに搭載されたHBMへ収めることが難しくなります。HBMに収まらない部分をCPUメモリやSSDへ置くこともできますが、GPUとの間でデータを移動する時間がボトルネックになります。HBFはモデルの重みや大容量のキャッシュなどをGPUの近くへ配置し、HBMより大容量で、SSDより高帯域なメモリ階層を作るための技術です。
位置づけHBFはHBMを置き換える技術ではない
HBFは名前や形状がHBMに似ていますが、HBMの完全な代替ではありません。HBMはDRAMを使用しているため、低遅延な読み書きに適しています。GPUが計算中に頻繁にアクセスするデータや、書き換えが多い作業領域にはHBMが向いています。
HBFはNANDフラッシュを使用するため、HBMよりアクセス遅延が大きく、読み書きの単位も大きくなります。Sandiskも、HBFはHBMより高い遅延と大きなページサイズを持つことを認めています。実際のAIアクセラレーターでは、使用頻度が高く応答速度が重要なデータをHBMへ配置し、大容量で読み出し中心のデータをHBFへ配置する構成が有力です。HBMを撤去してHBFだけを搭載するのではなく、HBMとHBFを併用する階層型メモリが基本になります。
比較HBF・HBM・GDDR7・SSDの違い
HBFは、現在のゲーミングGPUで使われるGDDR7とも性質が異なります。GDDR7とHBMはDRAMをベースにしているため、電源を切ると保存内容が消えます。一方、HBFとSSDはNANDフラッシュなので、電源を切ってもデータを保持できます。
| 種類 | 記憶媒体 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| HBM | DRAM | 高帯域・低遅延・高コスト | AI、HPC |
| GDDR7 | DRAM | GPU基板へ搭載しやすく高速 | ゲーミングGPU |
| HBF | NAND | 大容量・高帯域・不揮発 | AI推論 |
| NVMe SSD | NAND | 非常に大容量だがGPUから遠い | OS、ゲーム、データ保存 |
NVIDIA H200は、GPU全体で141GBのHBM3eと4.8TB/sのメモリ帯域幅を備えています。Micron GDDR7は、32Gb/s動作時にGPUのメモリシステム全体で1.5TB/sを超える帯域幅を実現できるとされています。HBFの最大3.0TB/sも非常に大きな数字ですが、HBMやGDDR7の数字とは測定範囲や構成が異なるため、単純に「HBFはH200のHBMより遅い」「GDDR7より2倍速い」と比較することはできません。HBFの最大の特徴は、絶対的な速度だけでなく、1スタック最大512GBという容量と帯域幅を両立する点にあります。
容量の単位最大512GBはGPU全体ではなくHBFスタックの容量
今回発表された最大512GBは、HBFの1つの積層デバイスが対応する最大容量です。GPUへ搭載できるHBFの合計容量は、HBFスタックの搭載数によって変わる可能性があります。Sandiskが2025年に公開した構想図では、512GBのHBFを8基搭載し、合計4,096GBのメモリをGPUへ組み合わせる例や、HBFを6基とHBMを2基組み合わせて合計3,120GBとする構成が示されていました。
ただし、これはHBFの可能性を示す概念図であり、4TBのHBFを搭載したGPUが製品化されたという意味ではありません。実際の搭載容量は、GPUパッケージの面積、消費電力、冷却、コスト、UCIeの接続数などによって決まります。
誤解注意「GPUに512GBのVRAMを搭載」とは少し違う
HBFを搭載したGPUを、単純に「512GB VRAM搭載GPU」と呼ぶのは正確ではありません。現在のVRAMは、GPUが直接使用するGDDRやHBMを指すのが一般的です。HBFはGPUへ近接して接続されますが、HBMとはアクセス遅延や書き込み特性が異なります。
HBFがOSやアプリケーションから通常のVRAMとして見えるのか、ストレージに近いメモリ階層として管理されるのかは、GPUメーカーの実装とソフトウェアによって変わります。HBF規格にはソフトウェアI/Oの指針も含まれていますが、実際のGPU製品におけるメモリ管理方法まではまだ確定していません。そのため、HBFは「GPUのVRAMを512GBへ増やす部品」というより、「GPUの近くに大容量の高速フラッシュ領域を追加する技術」と考えた方が分かりやすいでしょう。
性能HBFは本当にHBM並みに速いのか
Sandiskは、HBFを使ったAI推論について、容量無制限のHBMを仮定した構成との性能差が2.2%以内だったと説明しています。検証対象はLlama 3.1の405Bモデルで、8ビットの学習済みモデル重みを読み出す処理をシミュレーションしたものです。
この結果だけを見ると、HBFがHBMとほぼ同じ性能を出せるように見えますが、これはSandiskによる社内シミュレーションであり、市販GPUを使った独立機関のベンチマークではありません。また、容量無制限のHBMを比較対象とし、特定のAI推論処理をモデル化した結果です。ゲーム、AI学習、動画編集、物理演算など、書き込みやランダムアクセスが多い処理でも性能差が2.2%に収まることを示す結果ではありません。HBFの性能を判断するには、実際のGPUやAIアクセラレーターへ搭載された後に、遅延、持続帯域幅、消費電力、発熱、書き込み耐久性を確認する必要があります。
制約HBFの課題
HBFには容量と帯域幅の利点がある一方、実用化までに解決すべき課題も残っています。最大の課題は、NAND特有のアクセス遅延です。帯域幅を並列化によって高めても、最初のデータが届くまでの待ち時間をHBMと同じにすることは困難です。
書き込み耐久性も重要です。NANDフラッシュは、DRAMのように事実上無制限にデータを書き換えられる記憶媒体ではありません。AI推論で読み出し中心に使用する場合は問題を抑えやすいものの、頻繁な書き込みが必要な用途では、データ配置やウェアレベリングの設計が必要になります。ソフトウェア対応も欠かせません。HBM、HBF、システムメモリ、SSDのどこにデータを置くかを適切に制御できなければ、HBFの帯域幅を生かせません。HBFを追加しただけで既存のAIソフトウェアが自動的に高速化するとは限らず、ドライバ、ランタイム、AIフレームワーク、モデルのデータ配置を含む最適化が必要になります。2026年7月に公開された研究「FlashAccel」でも、HBFは高い容量を持つ一方、高いアクセス遅延、帯域幅の利用効率、異種メモリ管理が課題として挙げられています。
民生向けHBFはゲーミングGPUにも搭載される?
現時点で、GeForceやRadeonなどの一般向けゲーミングGPUへHBFを搭載する計画は発表されていません。SK hynixとSandiskが示している主な用途は、データセンターのAI推論です。初期仕様の発表にも、ゲームグラフィックスや一般向けビデオカードへの言及はありません。
PCゲームでは、テクスチャ、シェーダー、フレームバッファーなどへ低遅延で頻繁にアクセスします。大容量だけでなく、ランダムアクセスや書き込みの応答速度も重要なため、近い将来のゲーミングGPUでは、引き続きGDDR7が中心になる可能性が高いでしょう。HBFを搭載するとしても、GDDR7の代わりではなく、超大容量テクスチャ、生成AI機能、ローカルAIモデルなどを保存する補助メモリとして併用する形が考えられますが、これはHBFの特性から考えられる将来的な用途であり、NVIDIA、AMD、Intelから一般向けGPUへの採用は発表されていません。
今後最初のHBF製品はいつ登場する?
Sandiskは2025年時点で、最初のHBFサンプルを2026年後半に提供し、HBFを搭載したAI推論デバイスのサンプルを2027年初頭に用意する方針を示していました。2026年8月にはSK hynixとSandiskが初期標準仕様を公開したため、HBFは構想段階から、メーカーが共通仕様に基づいて製品を設計できる段階へ進んだことになります。ただし、2026年8月5日時点では、HBFを搭載した市販GPUやAIアクセラレーターの製品名、価格、量産開始日は正式発表されていません。HBFコンソーシアムにはGoogleとAI半導体企業のTenstorrentが参加しており、今後はAIアクセラレーター、クラウド向け独自チップ、エッジAI機器などで最初の採用例が登場する可能性があります。
今回の初期標準仕様では最大512GBですが、HBFの容量は将来さらに増える計画です。Sandiskが2025年に示した独自ロードマップでは、第1世代を512GB・1.6TB/sとし、第2世代では最大1TB・2TB/s超、第3世代では最大1.5TB・3.2TB/s超を目標としていました。今回発表された0.4〜3.0TB/sのオープン標準仕様と、Sandiskが以前示した製品ロードマップは同じものではなく、オープン標準は複数メーカーが互換性のある製品を設計するための枠組みであり、実際の製品容量や帯域幅は各メーカーの世代計画によって変わります。512GBはHBF技術全体の最終的な上限ではなく、初期標準で定義された最大容量です。メモリ規格全体の最新動向はDDR6の最新動向まとめもあわせてご覧ください。
Q&AHBFに関するよくある質問
総括まとめ|HBFはHBMとSSDの間を埋める新しい選択肢
HBFは、NANDフラッシュを8層または16層に積み重ね、GPUやCPUの近くへ配置する新しい高帯域メモリ規格です。SK hynixとSandiskが発表した初期標準仕様では、最大容量が512GB、帯域幅が約0.4〜3.0TB/sに設定されています。接続にはオープンなチップレット規格であるUCIeを採用し、GPU、CPU、独自AIアクセラレーターへ統合できる設計です。
HBFはHBMやGDDR7を完全に置き換える技術ではありません。低遅延が必要なデータはHBMやGDDRへ置き、大容量で読み出し中心のAIモデルをHBFへ置く階層型メモリが基本になります。現時点ではAI推論用のデータセンターが主な対象で、GeForceやRadeonへの搭載は発表されていません。
ゲームのVRAM不足をすぐに解決する技術ではないものの、将来的にはGDDRと併用し、超大容量データやローカルAIモデルを保持する補助メモリへ発展する可能性があります。まずは2026年後半のHBFサンプルと、2027年以降に登場する可能性がある最初のAI推論デバイスが、512GBの容量と高帯域をどこまで実際の性能へつなげられるかが注目されます。

