長城「GW-330SF」は防虫PC電源|149元・230W、防虫の正体はPCBの三防コーティング、日本の100Vで使えない理由も
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149元・230W、虫を止めるのではなく「入っても短絡させない」設計
出典:JD.com GW-330SF商品ページ、IT之家、長城 GW-330 V01、長城 GW-600ZG、航嘉 战鹰755C、CN201955728U、CN203689432U、CN218825460U、Microelectronics Reliability掲載論文(DTU)、電気事業法施行規則(e-Gov)。情報は2026年9月28日時点のものです。
PC電源の新製品といえば、最近はATX 3.1や12V-2×6、850W・1000Wといった大容量化の話題がほとんどです。そこへ中国の電源メーカー長城(Great Wall)が、容量ではなく「虫・湿気・ホコリへの強さ」を売りにした230W電源「小金剛 GW-330SF」をJD.com(中国の大手通販サイト)で販売し始めました。価格は149元で、3年保証が付きます。
「防虫電源」と聞くと吸気口に細かい網を張った製品を想像しがちですが、GW-330SFがやっているのは別のことです。内部のPCB(プリント基板)を保護膜で覆い、虫やホコリが入り込んでも基板上で短絡しにくくする設計で、電子機器では「コンフォーマルコーティング」と呼ばれる昔からある手法です。
さらにさかのぼると、中国では2011年に防虫網方式、2013年に絶縁カバー方式の防虫電源が実用新案として登録され、長城自身もゴキブリ対策をうたう電源を以前から売っていました。GW-330SFは突然現れた珍製品ではなく、その流れを低価格帯へ持ち込んだ製品です。日本では入力電圧の条件から一般家庭ではそのまま使えないため、国内で同じ心配がある人が取れる対策まであわせてまとめます。
目次
要点GW-330SFは230W・149元の「三防」ATX電源
長城がJD.comの自営旗艦店で「小金剛 GW-330SF」を149元で販売しています。定格230W、+12V系は19.16Aのシングルレーン、入力は180〜240V、保護回路はOVP・OCP・OPP・SCPの4種、保証は3年です。内部PCBには防虫・防湿・防塵をうたう「三防涂层(三防コーティング)」が施されています。

| 項目 | GW-330SF | 補足 |
|---|---|---|
| 定格出力 | 230W | 型番の「330」は定格ではない(旧来の命名) |
| +12V出力 | 19.16A(シングルレーン) | 12V×19.16A=約230W |
| 入力電圧 | 180〜240V | 日本の100Vは範囲外 |
| 保護回路 | OVP・OCP・OPP・SCP | 過電圧・過電流・過電力・短絡 |
| 基板保護 | 三防コーティング | 防虫・防湿・防塵をうたう |
| ケーブル | 直出し | ACケーブルは付属しない |
| 動作標高 | 最大5,000m | 高地での使用も想定 |
| 価格・保証 | 149元・3年 | JD.com掲載価格 |
同じJD.comの商品ページでは、定格330Wの「小金刚」も選択肢として並んでいます。230Wだけの単発品ではなく、少なくとも2つの容量で「三防」仕様を展開していることになります。商品名には「新国标(新しい国家規格)」とあり、製品画像には「GB 20943-2025」の3級・85%の表示もあります。
防虫の正体PCBを薄い保護膜で覆う三防コーティング
GW-330SFの「防虫」は、虫を寄せ付けない薬剤を入れているわけではありません。PCBの表面に電気を通しにくい薄い膜を作り、虫やホコリ、湿気が基板へ直接触れないようにするというのが中身です。中国語では「三防漆」「三防涂层」と呼ばれ、英語ではコンフォーマルコーティング(conformal coating)と呼ばれます。
狙いは、基板の上に水分や汚れがたまり、隣り合うはんだ付け部分の間に電気が漏れたり、短絡したり、腐食したりするのを防ぐことです。産業機器や車載機器では以前から使われてきた処理で、PC電源に限った特別な技術ではありません。
GW-330SFは、工業用の電源では当たり前の処理を、149元の自作PC向け電源で前面に出したと見ると分かりやすくなります。
虫がPC電源を壊す仕組みも、この延長で考えると分かりやすくなります。電源内部には、コンセントから入ってきた交流を扱う一次側の回路があり、電位の違うはんだ付け部分が狭い間隔で並んでいます。そこに虫が入り込んで足や体で端子の間をまたぐと、虫の体が電気の通り道になって短絡し、電源が保護回路で止まったり、部品が焼けたりします。表面が絶縁膜で覆われていれば、虫が触れても端子どうしが電気的につながりにくくなります。
仕組み虫を「入れない」のではなく「入っても壊れにくくする」
ここは誤解しやすいところです。GW-330SFは密閉型の電源ではありません。製品画像を見ると、上面には大きなファングリル、背面には丸穴の通気孔が並んでおり、空気の通り道の大きさは普通のATX電源と変わりません。小さな虫やホコリが内部へ入ること自体は防げないと考えた方が正確です。
そのうえで、入ったあとに基板上で事故が起きにくいようにしているのがGW-330SFの考え方です。中国ではこれまでにも、防虫電源について3つの違う方式が考案されてきました。
| 出願 | 方式 | 狙い |
|---|---|---|
| 2011年(CN201955728U) | ファンや通気口に防虫網を付ける | 虫とホコリを入口で止める |
| 2013年(CN203689432U) | PCBの底面を絶縁保護ケースで覆う | 入った虫が基板に触れて起こる短絡・自動シャットダウンを防ぐ |
| 2022年(CN218825460U) | PCB底面のはんだ部分を熱伝導性の保護シリコンシートの内側に収める | 虫がはんだ部分に届かないようにする |
いずれも中国の実用新案です。2022年のものはPCメーカーの広州七喜電脳(Hedy)が出願しており、背景の説明に「電源はPC本体の下のほうにあって床や机に近く、通気口の穴も大きいので虫が入りやすい。虫がPCBAの底のはんだ部分に登ると短絡故障を起こす」と書かれています。電源メーカーやPCメーカーが、虫を現実の故障原因として扱ってきたことが分かります。
GW-330SFのやり方は3つ目に近く、しかも一部分だけでなく基板全体を覆う点が違います。網は目詰まりすれば冷却を妨げますし、カバーやシートは覆った面しか守れません。コーティングは冷却風の流れをほとんど変えずに基板の表と裏をまとめて守れるため、低価格の電源に組み込みやすい方式です。
前例防虫をうたうPC電源は今回が初めてではない
長城自身、以前から防虫をうたう電源を売っています。公式サイトに掲載されている「智能管家」シリーズのGW-600ZG(定格500W)とGW-725ZG(定格625W)には、「防虫設計により、ゴキブリなどの昆虫がPCBに入り込んで起こる電源故障を根絶する」と書かれています。事務用PC向けの小容量モデルだけでなく、500W〜600W台の電源にも防虫は入っていました。
競合の航嘉(Huntkey)も同じです。定格650Wの「战鹰755C」の公式ページには「防虫機能を備え、虫の侵入による電源損傷のリスクを減らす」とあります。
さらに言えば、GW-330SFの前身にあたる「小金钢 GW-330 V01」(定格230W)も、長城の公式ページで「防潮、防虫、防尘」をうたっていました。「三防」という売り文句自体は前からあり、今回変わったのは、それを実現する手段としてPCBの三防コーティングを商品名にまで明記したことです。
つまり「中国メーカーが虫対策という謎の機能を発明した」という話ではありません。防虫電源は中国市場ではかなり前から1つのジャンルとして存在しており、GW-330SFが新しいのは「防虫」を基板コーティングという具体的な手段で説明し、防湿・防塵とまとめて商品名にまで入れた点です。
背景なぜ中国では防虫電源が作られ続けるのか
虫が原因でPC電源が故障する頻度を示した統計は見つかりませんでした。「電源の故障の多くは虫のせい」と言える根拠はありません。
それでも複数の企業が十数年にわたって防虫構造を考え続けてきたのは、中国南部のように高温多湿でゴキブリが多い地域、ほこりの多い工場や倉庫など、虫とホコリが避けられない場所でPCが大量に動いているためと考えられます。PC電源は冷却のために大きな開口部が必要で、しかもケースの下のほう、床に近い位置に置かれることが多いパーツです。完全に密閉できない以上、「入られても壊れない」方向の対策が選ばれやすくなります。
用途230Wは事務用PC・POS端末向けの容量
最近のゲーミングPCに慣れていると230Wはかなり小さく見えます。GeForce RTX 5060のような補助電源付きのグラフィックボードを載せる容量ではなく、狙いはCPU内蔵グラフィックスで動く事務用PC、店舗のPOS端末、工場や倉庫の管理用PCといった、消費電力が100W前後に収まる機械です。
仕様で目を引くのは、+12Vが19.16Aある点です。12V×19.16Aで約230Wなので、定格のほぼすべてを12V系から出せます。今のPCはCPUもマザーボードも12Vから電力を取るため、12Vが強いことは実用上の安心材料になります。一方で型番の「330」は定格出力と一致しません。長城の小金剛シリーズは型番の数字と定格が違う命名が続いているため、中国の販売ページで選ぶときは商品名の「额定230W(定格230W)」の表記を確認する必要があります。
限界三防コーティングがあれば無敵、ではない
コーティングは基板を守りますが、電源全体を守るわけではありません。
- ホコリは中に入る。ファンの羽根やヒートシンクにホコリが積もれば冷却が落ちます。これはコーティングの有無と関係ありません
- ファンやコネクターは覆えない。回転部品や差し込み口にコーティングを塗ると機能しなくなるため、塗らない部分が必ず残ります
- 水の侵入には無力に近い。コンフォーマルコーティングは結露や湿気への耐性を上げるもので、水をかけても平気という防水とは別物です
コーティング自体の効き目も、塗れば一定というものではありません。デンマーク工科大学の研究チームが2024年にMicroelectronics Reliability誌で発表した研究は、はんだ付け後に基板に残るフラックス残渣とコーティングの相性を調べたもので、腐食を防ぐ性能にはコーティングの湿気を遮る性質と、基板への密着性が大きく影響すると報告しています。同じ「三防コーティング」でも、材料や塗り方で耐性は変わります。
「三防コーティングあり=虫が入っても湿気があっても壊れない」ではなく、同じ環境に置いた、何も塗っていない基板よりは故障しにくい、というのが正確な受け止め方です。
日本では一般家庭の100Vコンセントでは使えない
日本から見ると、仕様表で最初に確認したいのは入力電圧です。GW-330SFは180〜240V入力で、日本の一般家庭のコンセント(標準電圧100V)は範囲に入りません。電気事業法施行規則は、標準電圧100Vの場所で維持すべき電圧を「101Vの上下6V」、つまり95〜107Vと定めています。180V未満では電源が起動しないか、正常に動作しません。
日本の住宅にも200Vの回路はあり、同じ規則では「202Vの上下20V」(182〜222V)と定められているため、数字の上では180〜240Vの範囲に収まります。ただし200Vのコンセントはエアコンや電気自動車の充電などのためのもので、形状も100V用と違います。さらにGW-330SFにはACケーブルが付属せず、日本の電気用品安全法にもとづくPSEマークの確認もできません。輸入して日本の自作PCやゲーミングPCに使う製品ではないと考えてください。
日本向けに出ている230W前後のATX電源を探す場合も、国内で流通している電源の多くは100V〜240Vのフルレンジ入力です。購入時は仕様表の「入力電圧」に100Vが含まれているかを必ず確認しましょう。
対策日本で虫やホコリが心配なときにできること
GW-330SFそのものは買えませんが、「電源に虫やホコリが入って壊れるのが心配」という悩みは日本でも同じです。国内で取れる対策を、効果が大きい順に並べます。
- PCを床に直接置かず、台や棚の上に置く。電源の吸気口は多くのケースで底面にあり、床のホコリや虫をいちばん吸い込みやすい位置です
- ケースの底面・前面の防塵フィルターを外さずに使い、月に1回を目安に掃除する
- 半年に1回程度、電源の吸気口とファン周りのホコリを電動エアダスターなどで外へ吹き飛ばす。電源のケースは開けないでください。内部のコンデンサーには電源を切ったあとも電気が残ることがあります
- 電源を買い替えるときは、基板保護コーティング(コンフォーマルコーティング)を仕様に明記した製品を選ぶ
4つ目については、日本で買えるゲーミングPC向け電源にもコーティングを採用した製品があります。たとえばASUSのTUF Gaming Gold EVOシリーズは、基板に「湿気やごみから守る」とする保護コーティング(Protective PCB Coating)を施しています。猫や犬のいる家庭のホコリ・毛の対策は、猫の毛からゲーミングPCを守る方法で置き場所やフィルターの選び方を詳しく解説しています。
おすすめ国内で選べる基板コーティング電源と清掃道具
虫やホコリに強い電源を日本で選ぶなら、基板保護コーティングを公式に明記したモデルが候補になります。あわせて、電源の吸気口にたまったホコリは電動エアダスターで定期的に吹き飛ばしておくと、コーティングの有無にかかわらず冷却の低下を防げます。
FAQよくある質問
まとめまとめ|「虫を入れない電源」ではなく「虫が入っても壊れにくい電源」
長城の「小金剛 GW-330SF」は、定格230W・149元の小さなATX電源に、防虫・防湿・防塵をうたう三防コーティングを組み合わせた製品です。防虫の正体は基板を保護膜で覆うコンフォーマルコーティングで、虫の侵入そのものは止めていません。
防虫電源自体は中国で2011年ごろから考案されてきたもので、長城やHuntkeyも以前から防虫をうたう電源を出しています。GW-330SFはそれを基板コーティングという分かりやすい手段で、低価格帯の電源に持ち込んだ製品といえます。
日本では180〜240V入力のため家庭の100Vでは使えません。電源への虫やホコリが気になるなら、PCを床から上げる、フィルターと吸気口を定期的に掃除する、買い替え時に基板コーティングを明記した電源を選ぶ、の3つが国内で取れる現実的な対策です。
GW-330SFの防虫は、虫を止める網ではなく基板の保護膜です。日本の100Vでは使えないため購入候補にはなりませんが、虫とホコリへの備えとして「PCを床から上げる」「吸気口を掃除する」「基板コーティング付きの電源を選ぶ」は日本でもそのまま使えます。





