Steamの「埋もれインディー救済」は本物か?|500倍流入の正体と小規模開発者が今やるべき6つの露出戦略【2026年版】
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14件→7,341件は1本の実例。Valveが認めた推薦の実験と、小規模な開発者が見直すべき6つの項目
出典:Steamworks告知「Upcoming Changes to the Discounts & Events Section on Steam」(2026年9月29日) / Tim Bender氏(Hooded Horse)のLinkedIn投稿(2026年9月15日) / Steamworks「Visibility on Steam」 / Steamworks「Localization and Languages」 / Steamハードウェア&ソフトウェア調査(2026年9月) / Steamworks「Steam Tags」 / Steamworks「Release Dates」 / Steamニュース「Personal Calendar」(2025年10月21日) / Steamworks「Discounting」 / Steamworks「Update Visibility Rounds」 / Steamworks「UTM Analytics」 / Steamworks「Seasonal Sales」 / Steamworks「Upcoming Steam Events」 / 『デスゲームの報告書』Steamニュース「Simplified Chinese added」(2026年10月2日) / r/gamemarketingの開発者の投稿(2026年10月4日)
Steamのホームページにある「割引&イベント」欄(セール中のゲームや開催中のイベントを大きな画像で並べる帯)で、これまでほとんど表示されなかった小規模なインディーゲームへの訪問が急に増えています。火付け役は、戦略・シミュレーション系のインディーを多く扱うパブリッシャーHooded HorseのTim Bender CEOが9月15日に公開した数字です。ある作品では、この欄からのストアページ訪問がそれまでの5か月で合計14件だったのに対し、直近1か月だけで7,341件に増えていました。9月29日にはValveが開発者向けの告知で、この欄の一部を個人向けの推薦に置き換える実験を数か月続けていたことを認めています。
結論から書くと、小規模なゲームにも推薦の枠が回り始めたこと自体は本物です。ただし「500倍」は、以前の訪問がほぼゼロだった1本の実例です。1か月あたりに増えた訪問の数では、もともとこの欄に出ていた大きめのタイトルのほうが多くなります。Steamは小さなゲームを優遇し始めたのではなく、ゲームごとに「合う人」を探して見せる方向へ進んでいます。
そのため、小規模な開発者が手を入れるべきなのは推薦の裏技ではなく、Steamが「このゲームを誰に見せるべきか」を判断する材料です。見直す先は対応言語、タグ、発売日の表示、割引の間隔、アップデートの告知の5つで、効いたかどうかは流入元のレポートで確かめられます。10月に入ってもこの流れは続いており、日本語のゲームに簡体字中国語を足した直後に、中国語のレビューが2日で9月の合計を上回った例も出ています。Valveが廃止する厳選セール枠の詳細と、プレイヤー側でできる対策はDeadlock大型更新とSteamの厳選セール枠廃止の解説で確認できます。
目次
要点まず押さえたい3つの事実
Valveは割引&イベント欄の厳選枠の一部を個人向けの推薦に置き換える実験を数か月続け、この欄で1日に見せたゲームの数が10倍になったと発表しました。2027年初頭には、担当者が日程を組む方式を完全にやめます。
「500倍」は、以前の訪問がほぼゼロだった1本の実例です。月平均で比べると約2,600倍ですが、増えた訪問の数そのものは大きめのタイトルのほうが上回ります。
Steamの露出に効くのは、プレイヤー数と購入、対応言語、タグです。ストアページの訪問数や購入率は露出の要素ではなく、レビューの評価も40%以上なら関係しません。レビューが少ないゲームを優遇する仕組みは、公式の資料にはありません。
検証「500倍」の中身|14件と7,341件を同じ物差しで比べ直す
Bender氏が公開したのは、Steamworks(開発者向けの管理サイト)の流入元レポートのうち、割引&イベント欄からストアページへの訪問数です。ある作品では過去6か月の合計が7,355件で、そのうち直近1か月が7,341件でした。差し引くと、それ以前の5か月は合計14件しかありません。
「500倍」は、直近1か月の7,341件を前5か月の合計14件で割った約524倍のことです。期間の長さをそろえて月平均(14÷5=2.8件)と比べると約2,622倍になり、どちらの比べ方でも「500倍以上」は誇張ではありません。
見落とされがちなのは、Bender氏が同じ投稿で、以前からこの欄に表示されていた自社の大きめのタイトル2本の数字も出していることです。3本を同じ物差しで並べると、印象がかなり変わります。
| ゲーム | 前5か月の合計(月平均) | 直近1か月(月平均比) | 月あたりの増加 |
|---|---|---|---|
| 以前ほぼ表示されなかったインディー | 14件(2.8件) | 7,341件(約2,600倍) | 約7,300件 |
| Hooded Horseの大きめのタイトルA | 約6,000件(約1,200件) | 約1万4,000件(約12倍) | 約1万2,800件 |
| Hooded Horseの大きめのタイトルB | 約3万5,000件(約7,000件) | 約1万6,000件(約2.3倍) | 約9,000件 |
倍率では小さなゲームが桁違いですが、1か月あたりに増えた訪問の数では、タイトルAが約1万2,800件、タイトルBが約9,000件と、ニッチなインディーの約7,300件を上回ります。大きなゲームの取り分を小さなゲームへ回したのではなく、欄に並ぶゲームの数そのものが増え、どのゲームにも訪問が上乗せされた形です。Valveが挙げた「1日に見せたゲームの数が10倍」という説明とも合います。
倍率が極端になったのは、元がほぼゼロだったからです。「どの小さなゲームでも500倍になる」ではなく、「この欄から事実上締め出されていたゲームにも、月に数千件の訪問が届くようになった」と読むのが正確です。訪問がどれだけ購入につながったかは公開されておらず、Valveも訪問・ウィッシュリスト追加・カート追加の「意味のある増加」を挙げるだけで、増加率は出していません。
推薦の流入がゼロのままのゲームもある
Bender氏の投稿には、ほかのパブリッシャーからも実数が寄せられています。ホラー『Static Dread』シリーズを販売するPolden Publishingの共同創業者、Kirill Akimkin氏が挙げた数字では、2026年8月14日発売の続編『Static Dread: The Submarine』はウィッシュリストが3万5,000件から7万件に倍増し、その大半がパーソナルカレンダー(Steamが一人ひとりに新作と近日発売のゲームを勧めるカレンダー)経由でした。
同時にAkimkin氏は、ディスカバリーキューからもパーソナルカレンダーからも流入がゼロのゲームを抱えていることも明かし、結果は「ゲームの指標に大きく左右される」と結論づけています。推薦の対象が広がっても、Steamが「合う人がいる」と判断できなければ表示は回ってきません。
公式Valveが認めたこと、まだ決まっていないこと
9月29日の告知で確定したことと、まだ公表されていないことを分けておきます。開発者の計画に関わるのは、厳選枠の新規登録がすでに止まっている点です。
| 項目 | 内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 推薦の実験 | 割引&イベント欄の厳選枠の一部を、個人向けの推薦に置き換えて数か月テスト | 実施済み |
| 実験の効果 | この欄で1日に見せたゲームが10倍。ストアページ訪問、ウィッシュリスト追加、カート追加が増加 | 増加率は非公表 |
| 厳選枠の登録 | Daily Deal・Midweek Deal・Weekend Dealの新しい日程登録を停止。予約済みの枠は予定どおり実施 | 停止中 |
| 本格的な移行 | 2027年初頭に、担当者が組むカレンダー方式を完全に終了 | 正確な日付は未定 |
| 開発者向けツール | 割引とセールイベントを管理する新しいツールと、既存ツールの更新 | 中身は未公表 |

Valveが掲げる狙いは、開発者が「Valveの誰かを説得して自分のゲームを載せてもらうこと」に時間を使わず、ゲームと割引の中身づくりに集中できるようにすることです。推薦の細かな仕組みはまだ調整中で、Valve自身も「最初から完璧にはならない」と認めています。移行の時期は数週間のうちにもう少し明らかにする予定です。
仕組みSteamの露出を決めるもの、決めないもの
割引&イベント欄の新しい推薦の中身は公表されていません。一方で、Steam全体のアルゴリズムが何を見て何を見ないかは、Steamworksの露出に関する公式資料で公開されています。新しい推薦も同じSteamの上で動く以上、ここが出発点になります。
| 要素 | 露出への影響 | 開発者が押さえること |
|---|---|---|
| プレイヤー数と購入 | 強いシグナル。遊ばれて買われているゲームほど、より多くの人に見せる | 発売や割引の前に、買ってくれそうな人へ情報を届けておく |
| 対応言語 | ゲームが対応する言語を話すプレイヤーに見せやすい | ゲーム内の言語設定で判定され、ストアページの翻訳だけでは対応にならない |
| タグ | 表示するジャンル・タグのページと、似ているゲームの判定に使う | 露出に効くのは上位20個 |
| ウィッシュリスト | 近日登場の人気一覧(Popular Upcoming)など一部を除き、アルゴリズムの要素ではない | 発売時・早期アクセス終了時・20%以上の割引時に通知メールが届く相手になる |
| ストアページの訪問数 | 要素ではない | 訪問が購入につながれば、購入のほうが効く |
| 購入率 | 要素ではない | 訪問した人の何%が買ったかは問われない |
| レビューの評価 | 40%以上(賛否両論以上)なら要素ではない。40%を下回ると表示されにくくなる | 件数の多い少ないは要素に挙がっていない |
「レビューが100件未満のゲームが優遇されている」という見方は、この表からは出てきません。Bender氏の画面にレビュー100件未満の作品や、再販から4年でレビュー300件に届かない1980年代末〜90年代初頭の『Dungeons & Dragons』Gold Boxシリーズが並んだのは、本人が「まさに自分の好み」と書いているとおり、Bender氏の遊び方に合っていたからと見るのが自然です。
Valveは告知で、Steamの発見機能の目標を「正しいゲームを正しい客に見せること」としています。小さいことは条件ではなく、合う人が見つかれば規模に関係なく表示される、というのが今回の変化の中身です。なお、評価がアルゴリズムの要素でなくても、プレイヤーの購入判断を左右することは約3,800人のSteamユーザー調査でも出ています。
言語日本の開発者が最初に見るべきは「対応言語」
Steamは、ゲームが対応している言語を話すプレイヤーにそのゲームを見せやすくし、ローカライズされた製品を優遇します。対応しているかどうかはゲーム内の言語設定(インターフェース・音声・字幕)で判定され、ストアページだけを翻訳しても対応したことにはなりません。
Steamの表示言語の構成を見ると、日本語だけのゲームが推薦の候補になれる相手は限られます。2026年9月のSteamハードウェア&ソフトウェア調査では、英語と簡体字中国語の2言語で全体の約3分の2を占め、日本語は2.41%でした。
| 言語 | 割合(2026年9月) | 前月からの変化 |
|---|---|---|
| 英語 | 34.20% | −4.05ポイント |
| 簡体字中国語 | 31.39% | +7.42ポイント |
| ロシア語 | 9.05% | −0.85ポイント |
| スペイン語(スペイン) | 4.08% | −0.45ポイント |
| ポルトガル語(ブラジル) | 3.70% | −0.33ポイント |
| ドイツ語 | 2.48% | −0.24ポイント |
| 日本語 | 2.41% | −0.09ポイント |
調査はSteamクライアントの表示言語を集計したもので、簡体字中国語のように1か月で7ポイント以上動く言語もあります。それでも、推薦が人ごとに出し分けられる以上、英語や簡体字中国語に対応しているかどうかは、推薦の候補に入れる人数そのものを左右します。
すぐに全部を翻訳できなくても、手順はあります。Valveが勧めているのは、先にストアページを候補の言語へ翻訳し、地域別のウィッシュリストを見て翻訳の優先順位を決める方法です。対応言語をあとから増やした場合は大型アップデートとして扱え、お知らせとアップデート露出ラウンド(後述)で告知し、更新が大きければ割引を重ねることもValveが挙げています。
タグタグは「上位20個」と「重なり」で見直す
タグは、ゲームをどのジャンルのページに出すか、どのゲームと似ているかをSteamが判断する材料です。発売前に最低5個が必須で、Valveは20個まで付けるよう勧めています。タグは何個でも付けられますが、ストアで表示され、露出に使われるのは上位20個だけです。
推薦で効くのは、タグの順番より複数のタグがどれだけ重なるかです。「オープンワールド」と「ファンタジー」の両方を持つゲームは、その2つのタグが付いたゲームを遊んできた人に勧められやすくなり、重なるタグが多いほど結び付きは強くなります。
付いているゲームが少ないタグほど効く、という性質もあります。「アクション」は付いているゲームが多すぎて推薦にはほとんど影響しませんが、「パーティー制RPG」のように絞られたタグは、似たゲームとの結び付きを大きく強めます。
見直しはSteamworksのタグウィザード(Store Presence →「Edit Store Page」→「Basic Info」の「Tags」)で行います。
- 自作と客層が重なりそうなゲームを3〜5本選び、タグを見比べる。Valveも、似たゲームに付いているタグを参考にするよう勧めています。
- 最も具体的なジャンルとサブジャンルを上位5個に入れる。上位5個はゲームを説明する言葉としても使われ、一部の絞り込みは上位15個を優先します。
- 「インディー」「シングルプレイヤー」のように多くのゲームに付く語は下へ回す。タグウィザードの並べ替え提案(Suggest Prioritization)も同じ考え方ですが、ゲームの中身は知らない機能なので出発点にとどめます。
- プレイヤーが付けたタグで中身と違うものは外す。多くの人が付けたタグほど重みが増えるので、ホラーに付いた「家族向け」や、3Dのゲームに付いた「2D」は放置しないことです。
- タグを公開する。タグの公開はストアページの公開とは別の操作で、保留中のストアページの変更には影響しません。
露出を増やすつもりで、中身と関係のない人気タグを足すのは逆効果になりえます。タグが重なるゲームを遊んできた人に勧められる仕組みなので、合わない人に表示されても買われにくく、Steamが最も重く見るプレイヤー数と購入が伸びないためです。数年前に出したゲームのタグも、Valveはタグウィザードでやり直すよう勧めています。
発売前発売前なら、発売日の表示をぼかしたままにしない
Steamworksでは正確な予定日を必ず登録したうえで、ストアに見せる形を「日付」「年月」「四半期」「年」「近日登場(日付なし)」の5つから選べます。近日発売の一覧では、ぼかした分だけ遅い日付として並びます。年月なら月末、四半期なら四半期の最終日の扱いで、日付を出さない場合は日付を出しているすべてのゲームの後ろに回ります。
予定日は2週間前まで変更できます。2週間を切ると「近日発売」系の一覧に出る機会が増え、その時点で日付は動かせなくなります。
パーソナルカレンダーには、遊び方の傾向が似た人たちがウィッシュリストに入れているゲームをもとに、8週間先までの近日発売が表示されます。推薦は毎日学習し直され、ゲームが発売日を確定させるにつれて新しい作品がカレンダーに加わっていきます。早期アクセス中のゲームも、正式版の予定日を登録すればストアページとパーソナルカレンダーに表示されます。
完成の見通しが立っているのに「2026年」のような年だけの表示を続けているなら、年月か日付に切り替える時期です。ただし延期を重ねると、ウィッシュリストに入れてくれた人の信頼を削ります。日付を出すのは、ビルドの完成と審査提出の見通しが立ってからにします。Steam Next Festのように未発売のゲームしか参加できない催しもあるため、発売日はその日程とあわせて決めるのが確実です。
発売後発売済みなら、割引は「30日ルール」から逆算して組む
割引&イベント欄は、割引中のゲームと開催中のイベントを並べる欄です。割引を設定したゲームは、タグと人気、その人への推薦をもとに、Steam各所の「スペシャル」欄に出る対象になります。推薦が人ごとに変われば、割引のたびに合う人の画面へ出る機会が増える計算で、Bender氏も今回の変化を「割引中の長期的な露出が劇的に良くなった」と表現しています。
割引には決まりがあるため、闇雲に回数を増やすことはできません。組み方に効く決まりは次のとおりです。
| 決まり | 内容 | 組み方への影響 |
|---|---|---|
| 割引の間隔 | 割引の終了から次の割引の開始まで30日以上あける | 季節セールだけは例外で、前後30日以内でも参加できる |
| 長さと割引率 | 1〜14日、10〜95% | 最長の14日割引を繰り返すと、44日ごとの周期になる |
| 発売直後 | 早期アクセス開始・正式版発売から30日は割引できない | 例外はローンチ割引(7〜14日、最大40%)。発売前にしか設定できない |
| 値上げの後 | いずれかの通貨で値上げしてから30日は割引できない | この30日は季節セールにも参加できない |
| 20%以上の割引 | ウィッシュリスト登録者に通知メールが届く | 20%未満の割引では通知は届かない |
そのうえでValveは、割引の深さを1年以上かけて33%→50%→66%→75%と段階的に上げること、割引を大型アップデートなどの更新に合わせること、DLCや上位エディションも同じ時期にまとめて割引くことを勧めています。本編とDLCの割引を別々の週に分けると、露出が分散してしまうためです。
季節セールは30日ルールの例外なので、独自の割引はその前後に置けます。2026年のオータムセールは10月1日〜8日、ウィンターセールは12月17日〜2027年1月4日(いずれも米国太平洋時間)です。2027年前半までの日程はSteamセール日程2026-2027年版で確認できます。Valveが告知した割引管理の新しいツールの中身が出たら、組み方の前提が変わらないかを確かめてください。
更新大型アップデートは「アップデート露出ラウンド」と組み合わせる
アップデート露出ラウンドは、大型アップデート、新しいコンテンツ、DLC、新機能を出したときに、Steamのホームページにある「Recently Updated」の欄へゲームを載せる仕組みです。表示される相手は、そのゲームを持っている人とウィッシュリストに入れている人で、割引&イベント欄の推薦とは届く相手が違います。
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 回数 | 1本につき5回 | 早期アクセスと正式版で共有。売れ行きのよいゲームには追加されることがある |
| 期間 | 開始から最長30日、またはホームページでの表示100万回まで | 先に届いたほうで終わる |
| 使える時期 | 発売時の露出が終わってから | 早期アクセスは開始から2週間後。ラウンドの間隔に制限はない |
| 必要なもの | 短い説明文と、30日以内に投稿したコミュニティのお知らせ | お知らせを先に出しておく |
| 季節セール中 | ホームページがセール一色になり、この欄は表示されない | 表示されない日も30日に数えられる |
| DLCの発売 | DLC単体のラウンドはない | 本編のラウンドを使い、説明文でDLCを告知する |
新しい人には割引&イベント欄の推薦が、すでに興味を持っている人には露出ラウンドが届きます。大型アップデート、対応言語の追加、割引を同じ時期に重ねれば、両方の相手にまとめて「もう一度見る理由」を届けられます。季節セールの期間は露出ラウンドが表示されないので、ラウンドはセールと重ならない時期に始めます。
5回しかないので、早期アクセス中の細かな更新で使い切らないことも大切です。正式版の発売後に大型アップデートを出しても、ラウンドが残っていなければこの欄には載りません。
計測効いたかどうかは流入元のレポートで確かめる
Steamworksのゲームのページから「Marketing & Visibility」を開き、「Store & Steam Platform Traffic Breakdown」のタブを選ぶと、ゲームがSteamのどこに何回表示され(インプレッション)、そこから何回ストアページが開かれたか(訪問)を、表示場所ごとに確認できます。Bender氏の7,341件も、こうした場所ごとの集計から見つかった数字です。
見るべきなのは、直近の割引期間とその前の割引期間で、割引&イベント欄からの訪問がどう変わったかです。発売前のゲームなら、パーソナルカレンダーやディスカバリーキューからの訪問もあわせて追います。
X、YouTube、記事、広告などSteamの外から送るリンクには、UTMパラメーターを付けて成果を測れます。リンク先はアプリのページかセールのページに限られ、utm_sourceかutm_campaignのどちらかが必要です。たとえば次のような形です。
https://store.steampowered.com/app/(AppID)/?utm_source=x&utm_campaign=update_v12
Steamにログインした状態でこのリンクから来た人が、72時間以内にウィッシュリスト追加・購入・無料ゲームの入手(キーの登録を含む)をすると、その成果として数えられます。外からの訪問が増えていないのに割引&イベント欄の訪問だけが伸びていれば、推薦の効果と切り分けられます。逆に、日本の記事がきっかけでウィッシュリストが1,000件増えた『The Hive』の例のように、外部の露出が効いている場合もあります。
続報10月に入っても推薦の流れは続いている
9月29日の告知のあとも、Steamは個人向けの推薦を広げる方向のまま10月を迎えています。10月1日に始まったオータムセールでも、トップページに並ぶゲームはおすすめの仕組みが選び、期間中に入れ替わります。10月に入って出てきた実例を見ると、推薦の流入が動くのは「小さいゲームだから」ではなく、見せられる相手が増えたときや、買われて遊ばれた実績が積み上がったときです。
オータムセールのトップページもおすすめの仕組みが並べる
Valveの季節セールの資料では、セール中のトップページに載せるゲームはおすすめエンジンが振り分け、よく見に来る人にも新しいゲームが見えるよう、表示を期間中に定期的に入れ替えるとしています。以前のように特定のゲームを24時間だけ大きく載せるのではなく、載せたゲームそれぞれに期間全体で見てもらう機会を作るのが狙いです。
割引&イベント欄の新しい推薦と同じ仕組みだとは書かれていません。それでも、限られた枠を全員に同じ並びで見せる形から、人ごとに違う並びを見せる形へ移っている点は共通しています。オータムセールは日本時間10月9日午前2時まで続きます。
日本語のゲームに簡体字を足した直後、中国語のレビューが急増した
日本の個人制作のゲームでも、10月に入って動きが見えた例があります。shu3氏が9月1日に発売した推理アドベンチャー『デスゲームの報告書』(500円)は、10月2日のアップデートで簡体字中国語に対応し、同時に10%の割引を始めました。
簡体字中国語で書かれたレビュー(Steamでの購入分、日本時間で集計)は、9月の1か月で94件でした。それが10月2日に56件、3日に55件と、2日で9月の合計を上回っています。同じ期間の日本語のレビューは1日に数件から十数件で、発売翌日の9月2日に181件付いたころの勢いはすでに落ち着いています。
言語の追加、割引、アップデートのお知らせが同じ日に重なっているため、どれが効いたのかは開発者の流入元レポートを見なければ分かりません。それでも、10月に伸びたのが新しく対応した言語の利用者だったことは、対応言語を話す人に見せやすくするSteamの仕組みと合っています。
中国語に対応する前の9月にも、簡体字中国語のレビューは日本語版のまま94件付いていました。発売前なら地域別のウィッシュリスト、発売後ならレビューの言語の内訳が、どの言語から翻訳するかを決める手がかりになります。
「レビュー10件でディスカバリーキューが始まった」という報告
10月4日には、9月17日に初めてのゲームをSteamで発売した開発者が、ディスカバリーキュー(おすすめのゲームを1本ずつ順に見せる機能)からの訪問をRedditのゲームマーケティングの掲示板に報告しました。
発売時のウィッシュリストは約1,200件で、大手の配信者に遊ばれた動画の再生は合計で約100万回。それでも訪問と売上は下がり続けていましたが、9月27日に10件目のレビューが付くと、ディスカバリーキューという新しい流入元が現れました。数日で落ち着いた後も1日800〜1,000件ほどで推移し、訪問全体の約3分の2を占めていると開発者は書いています。直近1週間の売上は1日平均6〜7本です。
ただし、10件がディスカバリーキューに載る条件だとは言い切れません。Valveの露出の資料が挙げる要素はプレイヤー数と購入、対応言語、タグで、レビューの件数は入っていません。このゲームでは10件目と流入の始まりが重なりましたが、発売から10日たち、購入やプレイの実績が積み上がった時期とも重なっています。
10件を境に確実に変わるのは、ストアのレビュー欄の表示です。9件以下のうちは「3件のユーザーレビュー」のように件数しか出ず、10件に届くと「好評」「賛否両論」などの評価名が付きます。推薦の条件ではなくても、初めて見た人に評判が一目で伝わるようになる点で、最初の10件を集める意味はあります。
10月後半はFestが続く。前後の流入元を控えておく
オータムセールのあとも、10月はSteam全体の催しが続きます。参加するなら、催しの前の1週間と期間中で、流入元レポートの訪問を表示場所ごとに控えておきます。どの場所からの訪問が増えたかが分かれば、次の割引やアップデートをどこに合わせるかを決めやすくなります。
| 催し | 期間(米国太平洋時間) | 対象 |
|---|---|---|
| Steam Cooking Fest | 10月12日〜19日 | 料理や食べ物を扱うゲーム |
| Steam Next Fest | 10月19日〜26日 | 体験版を公開する発売前のゲーム(10月26日より後に発売するもの) |
| Steam Scream V | 10月26日〜11月2日 | ホラーと、ハロウィーンを題材にしたゲーム |
Next Festは、発売前のゲームが体験版で将来の客を集める催しです。1本のゲームが参加できるのは1回だけで、開催中にまだ発売していないことが条件になります。次の開催は2027年2月22日〜3月1日なので、それより前に発売するゲームにとっては今回の10月の回が最後の機会です。
対策状況別、今から見直せること
同じ小規模なゲームでも、発売前か発売後かで手を付ける順番が変わります。
- 発売前で、日本語だけに対応しているゲーム:英語(余力があれば簡体字中国語)への対応計画を先に立て、まずストアページを英訳して地域別のウィッシュリストを確かめます。タグの上位5個も、海外の似たゲームと見比べて直します。
- 発売前で、完成の見通しが立っているゲーム:「年」だけの表示を年月か日付に切り替え、パーソナルカレンダーの8週間に入る時期を意識します。日付を変えられるのは2週間前までです。
- 発売から30日以内のゲーム:30日が明けた後の最初の割引と、次の季節セールの位置を決めます。最初の割引を20%以上にすると、ウィッシュリスト登録者に通知が届きます。
- 発売済みで、割引の実績があるゲーム:流入元レポートで割引&イベント欄の訪問の推移を確かめ、次の割引を大型アップデートとアップデート露出ラウンドに重ねます。
- 数年前に発売したゲーム:タグウィザードでタグを作り直し、言語の追加や記念アップデートを口実に割引を組みます。発売から時間のたった作品がSteamの売上の大半を占める状況は、2026年上半期のSteam売上の分析でも見えています。
過去の価格や同時接続数の推移を手早く確かめるなら、SteamDBの使い方も役に立ちます。自作と似たゲームが、いつ、何%の割引をしてきたかを見比べられます。
- 以前は割引&イベント欄に出られなかったゲームにも、合う人の画面に出る機会が回る
- 発売から時間のたった作品も、割引のたびに見つけ直されうる
- Valveへの売り込みより、ゲームと割引の中身に力を注げる
- 推薦の中身は非公表で、流入がゼロのままのゲームもある
- 訪問がどれだけ売上につながったかは公表されていない
- 2027年初頭の本格移行までに、仕組みが調整される可能性がある
Q&Aよくある質問
まとめまとめ|「救済」は本物、ただし配られるのは枠ではなく「合う人」
割引&イベント欄の訪問が5か月14件から1か月7,341件へ増えた例は実在し、Valveも9月29日に推薦の実験と2027年初頭の本格移行を認めました。小規模なゲームにも推薦の枠が回り始めたこと自体は本物です。
ただし「500倍」は元がほぼゼロだった1本の数字で、増えた訪問の数では大きめのタイトルのほうが上です。流入がゼロのままのゲームもあります。Steamは小さいゲームを優遇するのではなく、合う人を探して見せる方向へ進んでおり、その判断材料はプレイヤー数と購入、対応言語、タグです。
この流れは10月に入っても続いており、オータムセールのトップページもおすすめの仕組みが並べています。日本語のゲームに簡体字中国語を足した直後に、中国語のレビューが2日で9月の合計を上回った例も出ています。
小規模な開発者が今やるべきなのは、Steamが「このゲームを誰に見せるべきか」を判断できる状態を整えることです。日本語だけのゲームなら英語対応の計画、すべてのゲームでタグの上位20個の見直し、発売前なら発売日の表示、発売後なら30日ルールから逆算した割引と、大型アップデートに合わせた露出ラウンド、そして流入元レポートでの効果の確認。ここまでを整えておけば、2027年の本格移行にもそのまま備えられます。





