Proton Experimental 9月更新|Winning Post 9のかな入力修正、Wine MonoがARM64ネイティブに
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Winning Post 9のかな入力を修正、Wine MonoとXaliaはARM64ネイティブに
出典:ValveSoftware/Proton Wiki「Changelog」、ValveSoftware/Proton「Releases」、ValveSoftware/wine「Revert “HACK: Use x86 mono on aarch64.”」(2026年9月14日)、ValveSoftware/Proton「xalia: Use arm64 build in arm64 Proton.」、Wine Mono「wine-mono-11.3.0」(2026年8月17日)、Xalia「xalia-0.5.0」(2026年9月11日)、Steamworks「What games can run standalone on Steam Frame」、Microsoft Learn「Arm64X PE Files」にもとづきます。情報は2026年9月24日時点のものです。
Valveが2026年9月21日、Windows向けゲームをLinuxやSteamOSで動かす互換レイヤー「Proton Experimental」を更新しました。『Winning Post 9』でかなを入力できない問題や、Proton 11になってからAMD GPUで『Deus Ex: Mankind Divided』が遊べなくなっていた問題が直っています。ランチャーや設定画面をゲームパッドで操作できるようにする補助ツール「Xalia(ザリア)」も0.5.0になり、マウス前提の画面で操作が止まる不具合が4タイトル分修正されました。
もう一つの柱は、.NET Framework向けのアプリを動かす「Wine Mono」の11.3.0への更新です。Wine MonoとXaliaの両方にARM64版が加わり、ARM64版Protonで続いていた「x86-64版のMonoを代わりに使う」暫定処理が9月14日に撤回されました。Snapdragon 8 Gen 3を積んだSteam Frameで、.NET製のランチャーやXaliaがx86のコード変換を通さずに動く準備が整ったことになります。
ただし、9月21日の更新で新たにプレイ可能になったタイトルはなく、Valveは性能の向上もうたっていません。Steam DeckやLinux PCで修正対象の症状が出ているなら切り替える価値があり、問題なく遊べているなら安定版のProton 11.0-2のままで構いません。
目次
変更点9月21日更新で追加された修正は11項目
Proton ExperimentalのChangelogは8月からの変更を積み上げて書く形式で、その回に追加された項目だけが太字になっています。9月21日に太字で加わった項目を整理すると次の11項目です。
| 対象 | 変更内容 |
|---|---|
| Winning Post 9 | かなを入力できない問題を修正 |
| Deus Ex: Mankind Divided | AMD GPUで再びプレイ可能に(Proton 11の回帰修正) |
| Ragnarok: The New World | Steam Deck以外の機器でもプレイ可能に |
| Making Lovers | ムービーが再生されない問題を修正 |
| EA App | Gamescope使用時にログイン画面へフォーカスが移らない問題を修正 |
| Fallout: New Vegas | ランチャーでXaliaが違う項目を強調表示する問題を修正 |
| Call of Duty: Modern Warfare 2(2009) | セーフモードの確認画面をXaliaで操作できない問題を修正 |
| VITAL | 再頒布ランタイムのインストーラーをXaliaで閉じられない問題を修正 |
| FINAL FANTASY XI | ゲームパッド設定画面ではXaliaを無効化 |
| Wine Mono | 11.2.1から11.3.0へ更新(ARM64版を追加) |
| Xalia | 0.5.0へ更新(ARM64版を追加) |
Changelogの先頭にある「Now playable(新たにプレイ可能)」の欄には『Blair Witch VR』『City Car Driving』『Soul Land: Awakening World』など13本が並んでいます。ただしこれは8月からの累積で、最後の3本が加わったのは9月11日の更新です。9月21日に新しく追加されたタイトルはありません。「今回の更新で13本が遊べるようになった」わけではない点に注意してください。
日本語入力Winning Post 9のかな入力はWine側の入力処理で直った
『Winning Post 9』は、コーエーテクモゲームスが2019年3月27日にSteamで発売した競走馬の生産・育成シミュレーションです。対応言語は日本語のみで、生産馬の馬名登録などでかなを入力する場面があります。Proton上ではこの入力を受け付けない問題があり、9月21日の更新で修正されました。
日本語入力に関係する変更として、9月10日にValve版Wineへ「winex11: Retrieve XIM input as UTF-8」というコミットが取り込まれています。X11のインプットメソッド(XIM)から受け取った文字列を、システムのロケールに依存する文字コードではなくUTF-8として読み取るよう改めたものです。特定のゲームに向けた回避策ではなくWineのX11ドライバー側の修正なので、同じ経路で日本語を入力する他のゲームでも挙動が変わる可能性があります。
ChangelogにタイトルがあるのはSteamの無印『Winning Post 9』(アプリID 939700)だけです。『Winning Post 9 2020』『Winning Post 9 2021』は別アプリとして販売されており、名前は挙がっていません。これらでかな入力に困っている場合も、まずProton Experimentalで試してみる価値があります。
ゲームパッドXaliaはマウス前提の画面をゲームパッドで操作するための部品
XaliaはProtonに同梱されている補助プログラムで、キーボードとマウスを前提に作られたWindowsの画面にゲームパッド用の操作を追加します。Protonは開いたウィンドウの中身を見て、必要なときだけ自動でXaliaを有効にします。ゲーム本編はコントローラーに対応していても、起動前のランチャー、グラフィック設定画面、DirectXやVisual C++のインストーラー、エラーダイアログだけがマウス操作を求めることは珍しくありません。Steam Deckなら画面のタッチ操作で切り抜けられますが、ヘッドセット単体で遊ぶSteam Frameでは、マウスを前提にした画面ほど操作が難しくなります。
9月21日の更新で直ったのは、まさにゲーム本編に入る前の画面です。『Fallout: New Vegas』のランチャーで違う項目が強調表示される問題、『Call of Duty: Modern Warfare 2(2009)』のセーフモード確認画面が操作できない問題、『VITAL』でランタイムのインストーラーを閉じられない問題が修正されました。逆に『FINAL FANTASY XI』のゲームパッド設定画面は、ゲーム自身がコントローラー操作に対応しているため、Xaliaが干渉しないよう無効化されています。
同梱されたXalia 0.5.0自体にも、Changelogには載っていない変更が入っています。
- Win32のスクロールバーを操作できるようになった
- 『HITMAN World of Assassination』のドロップダウンで、Aボタンが決定(Enterキー)として働くようになり、項目を選べない問題が解消した
- 『Memories Off #5』、『RefRain』の設定ツール、PlayOnlineと『FINAL FANTASY XI』のゲームパッド設定ツール、WiX形式のインストーラーなどに個別の対応を追加した
- 『Deus Ex: Mankind Divided』ではXaliaを使わないようにした
- 何もしていないときもメインループがCPUを使い続ける問題を修正した
最後のCPUの修正は地味ですが、バッテリーで動くSteam DeckやSteam Frameでは無駄な消費電力の削減につながります。どの程度効くかの数値は公表されていません。
ゲーム側のコントローラー操作とXaliaの操作がぶつかる場合は、Steamでゲームのプロパティを開き、起動オプションにPROTON_USE_XALIA=0 %command%と入力すると無効になります。Proton公式のREADMEでは、この環境変数を0にするとXaliaを無効化でき、指定しなければウィンドウの内容に応じて自動で有効化すると説明されています。
個別修正Deus Ex MD、Ragnarok、Making Lovers、EA Appの修正
『Deus Ex: Mankind Divided』は、Proton 11へ移行してからAMD GPUの環境で遊べなくなっていた回帰問題が修正されました。Steam DeckもAMD製のAPUなので対象に入ります。Proton 11でこのゲームが動かなくなり、Proton 10へ戻していた人は、Experimentalに切り替えて確認してみてください。先に挙げたとおり、Xalia 0.5.0でも同作ではXaliaを使わない設定が入っています。
『Ragnarok: The New World』は、Gravity Game Visionが2026年7月26日にSteamで配信した基本無料タイトルで、ストアの対応言語に日本語は含まれていません。これまではSteam Deckでしか遊べない状態でした。修正内容はProtonの起動スクリプトの変更で、同作のアプリID(4212480)に対してプロセスが使うアドレス空間を制限する設定(PROTON_LIMIT_ADDRESS_SPACE)を自動で有効にしています。
『Making Lovers』はムービーが再生されない問題が直りました。Valve版Wineの動画処理に、同作のムービーをMPEG-1形式として扱う個別の対処が加わっています。EA Appは、Steam Deckのゲームモードで使われる画面合成の仕組み「Gamescope」の上で、ログイン画面に入力フォーカスが移らない問題が修正されました。EA Appを経由するタイトルでログインに進めなかった場合に関係します。
ネイティブ化Wine MonoとXaliaがARM64でそのまま動くようになった
Wine Monoは、Windowsの.NET Framework 4.8.1以前の代わりとしてWineに組み込まれるパッケージです。.NET Frameworkで作られたゲーム本体やランチャー、設定ツールを動かすときに使われます。ここで押さえておきたいのは、.NET 5以降の新しい.NETとは別物で、対象はあくまで従来の.NET Frameworkのアプリという点です。
2026年8月17日に公開されたWine Mono 11.3.0で、初めてARM64版が加わりました。リリースノートでは「MonoをARM64のWindowsへ新たに移植した」と明記されており、Monoのランタイム本体以外のいくつかの部品はARM64EC(後述)としてもビルドされています。
それまでのARM64版Protonでは、ARM64版のMonoが存在しなかったため、Valve版Wineに2024年4月から「HACK: Use x86 mono on aarch64」という暫定処理が入っていました。ARM64の環境でもx86-64版のMono(libmono-2.0-x86_64.dll)を読み込む処理です。つまり.NETアプリは、Mono自体も含めてx86-64のコードとして動かす必要がありました。この暫定処理が2026年9月14日に取り消され、同じ日にARM64版Monoを読み込む変更が取り込まれています。
Xaliaも同じ流れの中にあります。Xalia自体が.NET Framework 4.8向けに作られ、Wine Mono上で動くプログラムだからです。9月14日にProton側へ入った変更で、ARM64版のProtonをビルドするときはXalia 0.5.0のARM64版(xalia-0.5.0-net48-arm64-mono.zip)を同梱し、Xaliaが使うSDL3もWine MonoのARM64版から参照するようになりました。MonoがARM64で動くようになったことで、その上で動くXaliaもARM64で動かせるようになった、という関係です。
時系列ProtonのARM64対応は4月のベータから始まっていた
今回の更新は「ProtonがARM64に対応した」という話ではありません。ARM64版Protonの土台はProton 11のベータ版から段階的に作られてきました。公式のリリースノートとコミット履歴で確認できる主な節目は次のとおりです。
| 時期 | 対象 | ARM64に関わる変更 |
|---|---|---|
| 2024年4月 | Valve版Wine | ARM64環境でx86-64版Monoを使う暫定処理が入る |
| 2026年4月16日 | Proton 11.0-beta1 | ARM64EC向けビルドにFEX-2604を追加 |
| 2026年7月7日 | Proton 11.0-1 | 正式版にFEX-2605(ARM64EC向け)を搭載 |
| 2026年8月17日 | Wine Mono 11.3.0 | 初のARM64版を公開 |
| 2026年8月21日 | Proton 11.0-2 | FEX-2607へ更新(Wine Monoは11.2.0のまま) |
| 2026年9月1日 | Proton | DXVKとvkd3d-protonをARM64Xとしてビルドする変更 |
| 2026年9月11日 | Xalia 0.5.0 | ARM64版を公開 |
| 2026年9月14日 | Valve版Wine/Proton | x86-64版Monoの代用を撤回し、XaliaのARM64版を同梱 |
| 2026年9月21日 | Proton Experimental | Wine Mono 11.3.0とXalia 0.5.0を反映 |
表のFEXは、x86のCPU命令をARM64の命令へ実行中に変換するソフトウェアです。Steam FrameではWindowsの処理をProtonが、CPU命令の違いをFEXが受け持ちます。これと逆に、ゲーム本体をARM64へ移植してFEXを通さずに動かした例が「Steam Frame版『Half-Life: Alyx』」です。移植されないほとんどのゲームは、今回のような周辺部品のARM64化の恩恵を受ける側になります。
ARM64ECとARM64Xは何が違うのか
ARM64ECは、MicrosoftがWindows 11 on Arm向けに用意したバイナリの形式です。ARMのネイティブコードと、エミュレーションで動かすx64のコードを同じプロセスの中で混ぜて使えるのが特徴で、アプリを部分ごとにARMへ移していけます。ARM64Xは、通常のARM64のコードとARM64ECのコードを1つのファイルにまとめた形式です。Microsoftはミドルウェアやプラグインのように、x64のプロセスにもARM64のプロセスにも読み込まれるコードに向いていると説明しています。
DirectXをVulkanへ変換するDXVKとvkd3d-protonは、まさにどちらのプロセスからも呼ばれる部品です。ゲーム本体がx86-64のままFEXで変換されていても、呼び出されるグラフィックス変換層はARMのネイティブコードで動かせる形になります。9月1日の変更と今回のWine Mono、Xaliaを合わせると、Valveは「ゲーム本体は変換、周辺の部品はネイティブ」という役割分担を部品ごとに進めていることが分かります。
期待値Steam Frameでゲームが速くなるわけではない
Valveは今回の更新について、Steam Frameでの性能向上も、新たに動くようになったタイトルも告知していません。Steamworksの開発者向け資料では、Steam FrameでWindowsゲームを単体で動かす方法について「ほとんどの開発者にとっては、Windows x86版をProtonとFEXで動かすことになるだろう」としています。ゲーム本体のx86のコードは、これからもFEXが変換します。
Wine MonoがARM64で動いて変わるのは、.NET Frameworkを使う部分だけです。.NET製のランチャーや設定ツールがFEXを通さずに動けば、起動までの待ち時間や動作の安定性が良くなる可能性はあります。一方、ゲーム本編のフレームレートを左右するのはゲーム本体のコードとGPUの処理で、そこは今回の変更の対象外です。Xaliaも同様で、効いてくるのは「ランチャーから先に進めない」という問題のほうです。
もう一つ、Steam Frameへいつ届くかも案内されていません。安定版の最新は8月21日のProton 11.0-2で、Wine Monoは11.2.0、ARM64版のMonoはまだ入っていません。Proton Experimentalの変更は、テストを経て次の安定版へ取り込まれるのが通常の流れです。
過去分9月4日と11日に追加された修正も入っている
8月の「Proton Experimental 8月更新」以降、9月21日までに2回の更新がありました。いまProton Experimentalに切り替えると、次の修正もまとめて入ります。
- 9月4日:『Far Cry 4』でコントローラーが安定して動かない問題、『Grand Theft Auto III』のオープニングムービーが再生されない問題(Proton 11の回帰)、『RaceRoom Racing Experience』でレース中にHUDが表示されない問題(同)を修正。『Lunacid』『Ligo』が再びプレイ可能に
- 9月11日:『STEINS;GATE RE:BOOT』でキャラクターのボイスが一部再生されない問題、『Borderlands 4』の初回起動時にコマンドプロンプトが表示される問題、EA App経由のタイトルで起動画面の画像が正しく表示されない問題を修正。Wine Monoを11.2.1へ更新
『STEINS;GATE RE:BOOT』のボイス欠けも、日本語のゲームをSteam Deckで遊ぶ人には関係の深い修正です。
手順Proton Experimentalへの切り替え方と戻し方
Steam DeckやLinux版Steamでは、ゲームごとに使うProtonを選べます。
- Steamのライブラリで対象のゲームを右クリックし(Steam Deckでは歯車ボタン)、「プロパティ」を開く
- 「互換性」を開き、「特定のSteam Play互換ツールの使用を強制する」をオンにする
- 一覧から「Proton Experimental」を選び、ゲームを起動する
- 症状が出ていた場面(かな入力、ランチャー、ムービーなど)を同じ条件で確かめる
切り替えて別の不具合が出たら、同じ画面で元のProtonに戻せば元どおりです。Protonはゲームごとに選べるので、すべてのタイトルを同じバージョンにそろえる必要はありません。プロパティ画面の詳しい操作や、切り替えが反映されないときの確認方法は「Proton 11.0-2が正式版に|起動しないゲームの直し方」で解説しています。
- Winning Post 9などでかなが入力できない人
- Proton 11にしてからDeus Ex MDがAMD GPUで起動しない人
- ランチャーや設定画面でゲームパッド操作が止まる人
- ARM64のLinux環境で.NET製アプリを試している人
- いま遊んでいるゲームが問題なく動いている人
- フレームレートの向上を期待している人
- Windows 11のPCでSteamゲームを遊んでいる人(Protonは使わない)
FAQよくある質問
PROTON_USE_XALIA=0 %command%と入力すると無効になります。ゲーム自身のコントローラー操作とXaliaがぶつかる場合に使います。指定しなければ、Protonがウィンドウの内容を見て必要なときだけ有効にします。まとめまとめ|症状があるゲームだけ切り替え、ARM64化は下地づくりと見る
2026年9月21日のProton Experimental更新では、『Winning Post 9』のかな入力、AMD GPUでの『Deus Ex: Mankind Divided』の回帰問題、『Ragnarok: The New World』のSteam Deck以外での起動、『Making Lovers』のムービー再生、Gamescope上のEA Appのログイン画面が修正されました。Xalia 0.5.0では、ランチャーや設定画面をゲームパッドで操作するときの不具合が4タイトル分直っています。
Wine MonoとXaliaのARM64化は、2024年4月から続いていた「ARM64でもx86-64版Monoを使う」暫定処理を終わらせる変更です。Steam Frameのフレームレートが上がる更新ではありませんが、x86のWindowsゲームをARM64のSteamOSで動かすための部品が、ゲーム本体以外から順にネイティブへ置き換わっています。Steam DeckやLinux PCで対象の症状が出ているなら今すぐ切り替え、それ以外は次の安定版を待つのが無難です。
9月21日のProton Experimentalで、Winning Post 9のかな入力、AMD GPUでのDeus Ex: Mankind Divided、Ragnarok: The New World、Making Lovers、EA Appのログイン画面を修正。Xalia 0.5.0でランチャー操作の不具合4件も解消。新たにプレイ可能になったタイトルはなし。Wine MonoとXaliaはARM64版になり、ARM64でx86-64版Monoを代用する暫定処理は撤回された。性能向上の告知はなく、Steam Frameへの反映時期も未定。症状があるゲームだけExperimentalへ切り替えるのが適切。



