初代DOOMにDLSS 5を実装|Steam版に入れるMODではない、320×200をDX12化した改造版の中身
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Steam版に入れるMODではなく、エンジン側を作り替えた改造版です
出典:niko-zvt/DOOM-DLSS-5(GitHub)、同リポジトリのG-buffer仕様(README-GBUFFER.md)、NVIDIA「DLSS 5 Available Now」(2026年9月1日)、VideoCardz「Doom 1993 gets DLSS 5 Neural Rendering」(2026年10月6日)、MakeUseOf「We have officially reached the point where DLSS 5 works on DOS games」、rakanki911/DLSS5-Swapper(GitHub)
1993年の初代『DOOM』で、NVIDIAのDLSS 5(AIが光や質感を描き足すニューラルレンダリング)を動かす実験が公開されました。「ついにDOOMがDLSS 5対応になった」と受け取りたくなりますが、実態は少し違います。
結論は、DOOMにDLSS 5を足したのではなく、DLSS 5へ映像を渡せるようにDOOM側を作り替えたものです。開発者のNikolai Zhivotenko氏は、id Softwareが公開したLinux版Doom 1.10のソースをWindows x64向けに移植し、表示をDirectX 12へ置き換えました。内部は320×200のまま、深度・法線・動きの情報を新たに出し、1280×800で表示します。
そのため、手元のSteam版DOOMにDLSS 5 Swapperを入れても同じことはできません。遊ぶ画質を上げる用途では、動かすとぼやけるため現状は実用になりません。見る価値があるのは、古いゲームをニューラルレンダリングへつなぐには何を直せばよいのかが分かる点です。
目次
要点まず何が起きたか
動くのはGitHubで公開されたWindows版の改造ソースポートだけです。DOOMのゲームデータ(IWAD)を読み込ませて遊ぶ作りで、DLSS 5を使うときはDLSS 5 Swapperを併用します。
中身DOOM側で何を作り替えたのか
ベースは、id Softwareが公開しているLinux版Doom 1.10のソースです。ここから描画の出口をDirectX 12へ差し替えています。ゲームの描画解像度は変えていません。READMEには、HUDやメニューが320×200前提で作られているため、解像度の定数は上げないよう書かれています。
出力方式は、起動オプションで切り替えられます。DLSS 5はこの一覧の途中に入る段で、単独のアップスケーラーではありません。
| モード | 起動オプション | 中身 |
|---|---|---|
| オリジナル | 指定なし | 4倍のニアレストネイバー拡大 |
| DLSS 3.5 | –ngx-dlss3.5 | Ray Reconstruction |
| DLSS 4 | –ngx-dlss4 | Super Resolution(プリセットK) |
| DLSS 4.5 | –ngx-dlss4.5 | Super Resolution(プリセットL) |
| DLSS 5 | –ngx-dlss5 | DLSS 4.5のあとにDLSS 5 Neural Renderingを適用(DLSS 5 Swapper導入時) |
| Anime4K/FSR 2 | –anime4k/–fsr2 | Anime4K(Fast Mode C)/AMD FSR 2.2 |
つまり「320×200をDLSS 5だけで1280×800へ拡大している」わけではありません。まずDLSS 4.5の経路で拡大し、そのうえでDLSS 5が仕上げをかける二段構えです。
追加情報1993年のエンジンに無かった深度・法線・動き
最新のゲームは、色のほかに深度(カメラからの距離)や法線(面の向き)、モーションベクター(ピクセルの動き)を持っています。1993年のDOOMはソフトウェアレンダリングで最終的な色だけを書いており、これらは存在しませんでした。この改造版は、描画の途中でそれぞれを計算して書き出します。
| 情報 | どう作っているか | 注意点 |
|---|---|---|
| 色 | パレットをガンマ補正したあとのRGBA8 | 拡大の入力になる元の320×200の絵 |
| 深度 | 壁・床・スプライトごとの計算式で、視点からの距離をマップ単位で出す | 空は一律8192、HUDなどの2D部分は0 |
| 法線 | 壁は壁の向き、床は上向き、天井は下向きを割り当てる | スプライトは常にカメラの方を向く。敵は立体ではなく平らな板として扱われる |
| 動き | 深度と前フレームの視点位置から、カメラの動きによる画素のずれを計算する。スプライトの動きは描画側が設定した場合に加える | オプティカルフロー(映像から動きを求める方式)ではない。メニュー・タイトル・空・HUDは0 |
動きを映像から求めず、エンジンが知っている情報から計算している点が、この改造版の核心です。ゲームのソースを書き換えられるからこそ、深度と視点の位置という確かな材料を取り出せます。
ただし、これは現代のゲームが持つ情報とは質が違います。法線は面ごとに割り当てた値で、敵のスプライトに凹凸はありません。動きも、カメラの移動と回転が中心です。
DLSS 5DLSS 5は拡大するだけの機能ではありません
DLSS 5は、DLSS Super Resolutionの後継ではありません。NVIDIAは、2026年9月1日に『NBA 2K27』で提供を始めたDLSS 5を「3D-Guided Neural Rendering」と説明しています。対象は公式にはGeForce RTX 50シリーズです。
NVIDIAの説明では、DLSS 5はフレームの色とゲームエンジンのモーションベクターを入力にし、1フレーム入力・1フレーム出力で処理します。同じ入力には同じ結果を返し、動いてもちらつかないよう、エンジンの動きの情報に結果を固定する設計です。モデルの学習では、アルベド、詳細なライティング、サーフェスの法線といったエンジン由来の情報も使われています。
NVIDIAは「出力の質は入力のフレームの精細さに左右される」とも説明しています。320×200の絵を土台にすれば、描き足せる情報も限られます。DOOM 1993を2016年版のような見た目に作り替える道具ではない、ということです。
なお、改造版が追加した深度と法線が、DLSS 5の推論そのものにどこまで使われているかは、公開情報からは分かりません。NVIDIAが推論の入力として挙げているのは、色とモーションベクターです。深度などは、同じ改造版が持つDLSS 4.5など、ほかの経路でも使われます。
画質静止画は鮮明、動かすとぼやける
海外メディアがこの改造版で検証した結果では、DLSS 5を入れると、テクスチャと一部のHUDが鮮明になりました。HUDのDoomguyの髪の色が、わずかに変わっています。ライティングの印象が変わるような変化はなく、「リマスター」と呼べる水準ではない、というのが検証者の評価です。
動かすと印象が変わります。同じ検証で、映像は動きの中で強くぼやけ、複数の敵に囲まれる場面ほど崩れました。DLSS 5を有効にするとCPU負荷も大きく上がり、フレームの出方が安定しなかったと報告されています。
ぼやける原因は、特定されていません。ただ、入力側に条件の厳しい要素が重なっています。
- 内部の解像度が320×200しかない
- 敵やアイテムが、法線を持たない平らなスプライトである
- 敵が前後に重なる場面が多く、隠れていた部分が突然現れる
- 動きの情報は、カメラの動きからの計算が中心になる
- 静止している場面では、テクスチャとHUDが鮮明になる
- ゲームの構造そのものは壊れない
- ソースが公開されており、同じ手法を他のエンジンへ応用できる
DLSS 5自体の欠点なのか、非公式のSwapper経由であることの影響なのか、この改造版の情報の質の問題なのかは、現時点では切り分けられていません。「ぼやける=DLSS 5が不安定」とは言い切れません。
Steam版Steam版DOOMにSwapperを入れても動きません
同じ検証者が、通常のSteam版DOOMとDOOM 64に、同じDLSS 5 Swapperの導入手順を試しています。どちらもDLSS 5は動かず、Swapperを入れ直しても変わりませんでした。別の海外メディアも、現状はこの改造版が必須としています。
理由は、ここまでの内容から読み取れます。DLSS 5が受け取る情報を、元のゲームが出していないからです。Swapperは対応するDLLを差し替えるツールで、ゲームが出していない深度やモーションを作ることはできません。この改造版は、ソースを書き換えて、その情報を出しています。
試すときの手順は、READMEによると次のとおりです。IWADをwadsフォルダへ置き、build.cmdでビルドして、play-windoom.cmdに–ngx-dlss5を付けて起動します。DLSS 5 Swapperは、ビルドで生成されるwindoom-ngx-dlss5の実行ファイルに向けます。IWADの例として、READMEはfreedoom2.wadとdoom2.wadを挙げています。
DLSS 5 SwapperはNVIDIAの公式機能ではなく、コミュニティが作ったツールです。公式にDLSS 5を使えるのはRTX 50シリーズで、RTX 40シリーズへの拡大はNVIDIAが公式に認めた対応予定の段階です。対象GPUごとの違いは、末尾の関連記事で整理しています。
比較外から掛ける方法とエンジンを改造する方法
旧作にDLSS 5を当てる方法は、2通りに分かれます。1つは、完成した映像をReShadeなどで外から取り込んで渡す方法です。ゲームを書き換えずに済み、対応タイトルを増やしやすい反面、動きの情報を外で作らなければなりません。この方式でDuke NukemやPongなど50本超へ当てた検証は、DLSS 5を旧作に無理やり当てた検証の記事にまとめています。
もう1つが今回のDOOMです。ソースを書き換え、ゲーム自身が深度や動きを出します。手間は大きくなりますが、情報の確かさが違います。
| 項目 | 外から掛ける方法 | エンジンを改造する方法 |
|---|---|---|
| 導入の手間 | ゲームを書き換えず、ツールを重ねる | ソースの移植と改造が必要 |
| 動きの情報 | 映像などから外で作る | エンジンの内部情報から計算する |
| 対象 | 多くのタイトルへ広げやすい | ソースが公開されたゲームに限られる |
| この例 | ReShade経由のDOSゲーム | DOOM-DLSS-5 |
今回の結果は、後者でも画質が自動で良くなるわけではないことを示しています。ソースを書き換えて情報を出しても、元の絵の情報量までは増えません。古いゲームをAIで作り直す話は、使うモデルだけでなく、エンジンから何を取り出せるかにも左右される、という見方ができます。
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DLSS 5を公式に使えるのはRTX 50シリーズだけです。公式対応のゲームが増えるのを待ちながら、改造版のような実験にも手を出すなら、このクラスが現実的な選択肢です。
まとめまとめ|DOOMが対応したのではなく、DOOMを対応できる形へ作り替えた
初代DOOMのDLSS 5実験は、Steam版にMODを入れたものではありません。Linux版Doom 1.10をWindows x64へ移植し、320×200の描画はそのまま、深度・法線・動きを新たに出して1280×800のDirectX 12へ渡す、専用の改造版です。
画質は、静止画でテクスチャとHUDが鮮明になる一方、動かすとぼやけます。原因は切り分けられておらず、遊ぶ用途では実用になりません。注目したいのは画質ではなく、古いエンジンにAIが必要とする情報を後から持たせる方法が、ソース付きで示されたことです。
初代DOOMのDLSS 5は、Steam版へ足すMODではなく、エンジン側を作り替えた改造版でのみ動きます。静止画は鮮明で、動かすとぼやけます。試すならGitHubの改造版とDLSS 5 Swapperが必要です。






