中国初の6nmゲーミングGPU「Lisuan LX 7G106」登場——RTX 4060相当の国産チップは、NVIDIAとAMDの価格を動かすか

中国初の6nmゲーミングGPU「Lisuan LX 7G106」登場——RTX 4060相当の国産チップは、NVIDIAとAMDの価格を動かすか
中国GPU 速報
中国が作った本物のゲーミングGPU
Lisuan Tech が6nm国産チップ「LX 7G106」を発表。RTX 4060相当・12GB GDDR6、2026年6月18日に中国国内で販売開始。日本では今すぐ買えないが、この登場がNVIDIAとAMDの価格戦略を揺さぶる可能性がある
TSMC 6nm12GB GDDR62026年6月18日 中国発売
3行でわかる Lisuan LX 7G106
  • 中国の半導体スタートアップ Lisuan Tech が、TSMC 6nm プロセスで製造したRTX 4060相当のゲーミングGPUを発表。黒神話:悟空・Cyberpunk 2077などの主要Steamタイトルに対応する
  • 米国の輸出規制でNVIDIAが中国市場から締め出された「空白」を埋める製品。中国国内ではすでにNVIDIAのシェアが95%→50%に低下しており、国産GPUへの移行が加速している
  • 現時点で日本での販売予定はない。ただし中国GPU市場の競争激化は中長期的にNVIDIA・AMDの価格戦略に影響を及ぼす可能性があり、日本のゲーマーも間接的に無視できない動きだ
目次

Lisuan Techとは何者か——「中国の半導体自立」を担うスタートアップ

「中国製GPU」と聞くと懐疑的になるかもしれません。しかし Lisuan Tech は、単なる粗製品を出してきた会社ではありません。

設立
2021年。創業者は1990年代の GPU パイオニア S3 Graphics の元エンジニア3名
資本
親企業 Dongxin Semiconductor から$27.7百万の支援(2024年の経営危機を乗り越え存続)
製造
TSMC 6nm DUV。中国の国内ファブではなく、台湾 TSMC を使用している点が重要
特徴
命令セットから GPU コアまで自社開発した「フルスタック国産 GPU」。NVIDIA の CUDA とは別の独自エコシステムを構築中

S3 Graphics の名前は、2000年代前半に3Dゲームをプレイしたことがある人なら覚えているかもしれません。その元エンジニアたちが、20年以上の時を経て中国の国家戦略の一環として「次の GPU」を作っています。

スペックと実力——RTX 4060と正面から比較する

項目Lisuan LX 7G106RTX 4060RTX 5060
製造プロセスTSMC 6nmTSMC 4NTSMC 4N
VRAM12GB GDDR68GB GDDR68GB GDDR7
FP32演算性能24 TFLOP/s15.1 TFLOP/s22.7 TFLOP/s
TDP225W115W145W
レイトレーシング非対応対応対応
DirectXDirectX 12DirectX 12 UltimateDirectX 12 Ultimate
3DMark Fire Strike約26,800約24,000約28,000(推定)
TDPは225Wで RTX 4060の約2倍です。同等の性能を出すのに消費電力が大きく、ワットパフォーマンスでは明らかに不利。これはプロセス世代(6nm vs 4N)の差が直接出ています

3DMark のベンチマーク上は RTX 4060 を上回りますが、レイトレーシング非対応という制約があります。Cyberpunk 2077 をレイトレーシングで遊びたい場合、LX 7G106 では不可能です(ラスタライズのみ対応)。

なぜ今、中国がゲーミングGPUを作れるようになったのか

背景には米国の輸出規制があります。この構造を理解すると、なぜ Lisuan の登場が「本物の脅威」になりうるかがわかります。

01
米国が中国への高性能 GPU 輸出を規制
2022年以降、NVIDIA の H100・A100・RTX 4090 などは中国への輸出が禁止または制限されました。2024年9月には中国規制当局も主要テック企業(Alibaba・ByteDance等)に NVIDIA 製品の購入禁止を発令。中国国内で NVIDIA のシェアは 95%→50% に低下しました
02
空白を埋めるために国産 GPU 開発が加速
Huawei・Moore Threads・Cambrian・Lisuan などの国産 GPU メーカーが雨後の筍のように登場。中国政府も「技術自立」戦略の一環として半導体開発を強力に支援。資金・技術者・ファブ(TSMC 含む)へのアクセスが整い、水準が急速に向上しました
結果
2026年、初の「使えるレベル」の国産ゲーミングGPUが登場
Lisuan LX 7G106 は、中国産として初めて「RTX 4060 相当のゲーミング性能を持ち、主要 Steam タイトルが動く」と公式に主張できる製品です。ベンチマーク上の数値もその主張を概ね裏付けています

日本で買えるのか——現実的な見通し

🇨🇳 中国
2026年6月18日発売
JD.com(京東)でプリオーダー開始。中国国内では主要な選択肢の一つになる見込み
🇺🇸 米国
当面困難
米中間の輸出規制・地政学的緊張から市場参入は難しい。技術的・政治的障壁が高い
🌏 新興国
展開の可能性あり
インド・東南アジアなどでは NVIDIA 製品の価格が高止まりしており、廉価な代替品への需要がある。中長期的な展開先として現実的

NVIDIAとAMDの価格を下げる力はあるか

ここが、日本のゲーマーにとって最も重要な問いです。

短期(1〜2年)
影響はほぼなし
  • 販売は中国国内限定
  • CUDA 非対応・RT 非対応でゲーミング PC ユーザーの代替にならない
  • ドライバの成熟度が初期段階
  • NVIDIA・AMD は日本市場で競合なしの状況が続く
中期(3〜5年)
間接的な圧力が始まる可能性
  • 中国市場での NVIDIA シェアが更に低下し、NVIDIA が「中国向け廉価モデル」を投入する可能性
  • 新興国(インド・東南アジア)での競争が激化すれば、グローバル価格に波及
  • Lisuan や Moore Threads が海外展開すれば直接競争が起きる
長期(5年以上)
シナリオが分岐する
  • シナリオA(競争激化):中国 GPU が RT 対応・CUDA 互換を実現し西側市場に参入→ NVIDIA・AMD が価格を引き下げざるを得なくなる
  • シナリオB(棲み分け):中国国内市場と西側市場がそれぞれ独自のエコシステムで分断し、競争は起きない
AMD は中国市場でのシェアを現在の数%から25%に引き上げる目標を掲げています。競合が増えた中国市場では、NVIDIA も RTX 4050 などの廉価モデルを規制回避で投入する動きを見せています。この「中国内の競争」が間接的に全体の価格水準を抑制する可能性はゼロではありません

現時点の弱点——「RTX 4060の代替」にはなれない

レイトレーシング非対応
DXR(DirectX Raytracing)に非対応。バイオハザード レクイエム・Cyberpunk 2077のRT設定は使えない
CUDA 非対応
AI・機械学習ツール(Stable Diffusion GPU版・Blender CUDA等)が使えない。OpenCL 3.0ベースのため利用環境が限定される
消費電力が大きい
225W TDPはRTX 4060の約2倍。電気代・冷却コストでランニングコストが増大する
ドライバが初期段階
2026年6月が初リリース。NVIDIA・AMDの数十年分の最適化には及ばず、不具合・互換性問題が出る可能性が高い

まとめ——「今すぐ買えない、でも無視できない」

今の日本のゲーマーへの影響

正直なところ、Lisuan LX 7G106 が今すぐ日本のゲーマーの選択肢に入ることはありません。レイトレーシング非対応・CUDA 非対応・消費電力大・ドライバ初期段階という制約は、現時点では RTX 4060 の代替として機能しません。

ただし、この製品の登場が示すのは「中国が本物のゲーミング GPU を作れるようになった」という事実です。TSMC 6nm で製造され、主要な Steam タイトルが動き、ベンチマークで RTX 4060 と同等という結果を出した製品が存在する。これは5年前には考えられなかったことです。

GPU が高い時代が続く今、競争相手の登場は長期的には歓迎すべきことです。Lisuan が次世代でレイトレーシング対応・消費電力改善・ドライバ成熟を果たしたとき、その影響は「中国市場内だけの話」では済まなくなります。

Writer
管理人アバター

ゲーミングスタイル管理人

自作PC愛好家・ゲーム歴15年超

ゲーミングPC歴は15年以上。毎年パーツを更新しながら最新トレンドを追いかけています。初心者にもわかりやすく、上級者も満足できる情報発信を心がけています。