中国初の6nmゲーミングGPU「Lisuan LX 7G106」登場——RTX 4060相当の国産チップは、NVIDIAとAMDの価格を動かすか
- 中国の半導体スタートアップ Lisuan Tech が、TSMC 6nm プロセスで製造したRTX 4060相当のゲーミングGPUを発表。黒神話:悟空・Cyberpunk 2077などの主要Steamタイトルに対応する
- 米国の輸出規制でNVIDIAが中国市場から締め出された「空白」を埋める製品。中国国内ではすでにNVIDIAのシェアが95%→50%に低下しており、国産GPUへの移行が加速している
- 現時点で日本での販売予定はない。ただし中国GPU市場の競争激化は中長期的にNVIDIA・AMDの価格戦略に影響を及ぼす可能性があり、日本のゲーマーも間接的に無視できない動きだ
目次
Lisuan Techとは何者か——「中国の半導体自立」を担うスタートアップ
「中国製GPU」と聞くと懐疑的になるかもしれません。しかし Lisuan Tech は、単なる粗製品を出してきた会社ではありません。
S3 Graphics の名前は、2000年代前半に3Dゲームをプレイしたことがある人なら覚えているかもしれません。その元エンジニアたちが、20年以上の時を経て中国の国家戦略の一環として「次の GPU」を作っています。
スペックと実力——RTX 4060と正面から比較する
| 項目 | Lisuan LX 7G106 | RTX 4060 | RTX 5060 |
|---|---|---|---|
| 製造プロセス | TSMC 6nm | TSMC 4N | TSMC 4N |
| VRAM | 12GB GDDR6 | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR7 |
| FP32演算性能 | 24 TFLOP/s | 15.1 TFLOP/s | 22.7 TFLOP/s |
| TDP | 225W | 115W | 145W |
| レイトレーシング | 非対応 | 対応 | 対応 |
| DirectX | DirectX 12 | DirectX 12 Ultimate | DirectX 12 Ultimate |
| 3DMark Fire Strike | 約26,800 | 約24,000 | 約28,000(推定) |
3DMark のベンチマーク上は RTX 4060 を上回りますが、レイトレーシング非対応という制約があります。Cyberpunk 2077 をレイトレーシングで遊びたい場合、LX 7G106 では不可能です(ラスタライズのみ対応)。
なぜ今、中国がゲーミングGPUを作れるようになったのか
背景には米国の輸出規制があります。この構造を理解すると、なぜ Lisuan の登場が「本物の脅威」になりうるかがわかります。
日本で買えるのか——現実的な見通し
NVIDIAとAMDの価格を下げる力はあるか
ここが、日本のゲーマーにとって最も重要な問いです。
- 販売は中国国内限定
- CUDA 非対応・RT 非対応でゲーミング PC ユーザーの代替にならない
- ドライバの成熟度が初期段階
- NVIDIA・AMD は日本市場で競合なしの状況が続く
- 中国市場での NVIDIA シェアが更に低下し、NVIDIA が「中国向け廉価モデル」を投入する可能性
- 新興国(インド・東南アジア)での競争が激化すれば、グローバル価格に波及
- Lisuan や Moore Threads が海外展開すれば直接競争が起きる
- シナリオA(競争激化):中国 GPU が RT 対応・CUDA 互換を実現し西側市場に参入→ NVIDIA・AMD が価格を引き下げざるを得なくなる
- シナリオB(棲み分け):中国国内市場と西側市場がそれぞれ独自のエコシステムで分断し、競争は起きない
現時点の弱点——「RTX 4060の代替」にはなれない
まとめ——「今すぐ買えない、でも無視できない」
正直なところ、Lisuan LX 7G106 が今すぐ日本のゲーマーの選択肢に入ることはありません。レイトレーシング非対応・CUDA 非対応・消費電力大・ドライバ初期段階という制約は、現時点では RTX 4060 の代替として機能しません。
ただし、この製品の登場が示すのは「中国が本物のゲーミング GPU を作れるようになった」という事実です。TSMC 6nm で製造され、主要な Steam タイトルが動き、ベンチマークで RTX 4060 と同等という結果を出した製品が存在する。これは5年前には考えられなかったことです。
GPU が高い時代が続く今、競争相手の登場は長期的には歓迎すべきことです。Lisuan が次世代でレイトレーシング対応・消費電力改善・ドライバ成熟を果たしたとき、その影響は「中国市場内だけの話」では済まなくなります。