CPUグリスの選び方と塗り方|種類比較・交換タイミング・失敗しない手順【2026年版】

CPUグリスの選び方と塗り方|種類比較・交換タイミング・失敗しない手順【2026年版】

CPUとクーラーのベースプレートは、見た目には密着しているように見えても、表面の微細な凹凸によって空気の層が残ります。空気の熱伝導率は約0.025 W/mKで、これがCPU温度を数十℃押し上げる原因になります。グリス(サーマルペースト)はこの隙間を埋めて熱の通り道を作るためのものです。

製品選びとしてはArctic MX-4を買えばほぼ間違いありませんが、「どんな種類があるか」「どれくらい塗るのか」「いつ交換するのか」を知らないと、性能を引き出せないまま使い続けることになります。このガイドで種類・製品比較・塗り方・交換タイミング・NGパターンを一通り確認してください。

目次

グリスの種類と選び方

市販のグリスは大きく4つに分類できます。性能と安全性のバランスで選んでください。

汎用・入門
シリコン系・汎用グリス
熱伝導率: 4〜9 W/mK

価格が安く電気を通さず扱いが簡単で、初めてグリスを使う人の第一選択です。Arctic MX-4がこのカテゴリの代表格で、性能・価格・安全性の三拍子が揃っています。定格運用であればこれで十分です。

初心者・コスパ重視に最適
ハイエンド
高性能非導電グリス
熱伝導率: 12〜15 W/mK

導電性がなく安全に使えながら、汎用グリスより高い熱伝導率を実現します。Thermal Grizzly KryonautやNoctua NT-H2が代表格。オーバークロックやPBO運用、9800X3Dのような発熱が大きいCPUに適しています。

OC・ハイエンド構成に推奨
上級者専用
液体金属グリス
熱伝導率: 70〜80 W/mK

金属を液状にしたもので熱伝導率が圧倒的ですが、電気を通すためCPU周辺の回路に触れると即故障につながります。IHSが半田付きのモデルへの使用、またはIHS除去(脱蓋)構成限定で、自信がある人以外は選ばないでください。

脱蓋構成・上級者専用。初心者は選ばない
付属品
CPU・クーラー付属グリス
熱伝導率: 4〜8 W/mK(一般的)

CPUやクーラーに塗り済みまたは同梱されているグリスです。「使えない」レベルではありませんが、市販の高性能グリスに比べてフルロード時に5〜15℃高くなる場合があります。急ぎでなければ交換を推奨します。

交換できるなら市販グリスに替える

おすすめグリス比較【2026年】

入手しやすく、信頼性の高い5製品を比較します。迷ったらMX-4で間違いありません。

製品名熱伝導率導電性価格目安こんな人に
Arctic MX-48.5 W/mKなし約800円迷ったらこれ。汎用の定番
Thermal Grizzly Kryonaut12.5 W/mKなし約1,400円OC・ハイエンドCPUに
Noctua NT-H214.8 W/mKなし約1,200円長期保持重視。5年保証
Arctic Silver 58.7 W/mK微弱あり約900円定番だが現在はMX-4が上位互換
TG Conductonaut73 W/mKあり(危険)約2,500円上級者専用。液体金属

グリスの量について
どの製品も1gもあれば5〜8回は塗れます。「大容量を買ってコスパを上げる」必要はほぼなく、2〜4gの小容量パッケージで十分です。グリスは開封後1〜2年で品質が下がるため、使い切れる量を買うのが正解です。

グリスの塗り方3種

正解は「1つではない」ですが、CPUのサイズに応じて最適な方法が変わります。

米粒法(センタードット)
推奨

グリスをCPU中央に米粒〜大豆粒大に置き、クーラーを上から押し付ける。圧力で自然に広がるため、広がり方を心配しなくて良い。ほとんどのCPUでこれが最適解。

X字塗り
大型IHS向け

X字にグリスを引く方法。IHSが大きいCore i9・Ryzen 9クラスで、米粒法だと端まで届かないときに有効。量が多すぎるとあふれやすいため注意。

全面薄塗り
上級者向け

プラスチックカードなどでIHS全体に薄く伸ばす方法。均一に塗れるが、量の調整が難しく塗りすぎる失敗が多い。工場出荷状態のようにしたい人向け。

量の目安は「控えめ」が正解
グリスは少なすぎるより多すぎる方が問題です。多すぎるとクーラー装着時にはみ出してCPUソケットを汚す可能性があります。米粒法なら「少し小さいかな」と感じる量で十分です。はみ出してしまったら無水エタノールで拭き取ってください。

グリス塗り替えの正しい手順

用意するもの:グリス本体、無水エタノール(または専用クリーナー)、キムワイプまたはコーヒーフィルター(繊維が残らないもの)、綿棒。

  1. PCをシャットダウンして電源ケーブルを抜く
    静電気対策として、ケースの金属部分に触れてから作業を始めてください。マザーボードの24pinコネクタを抜かなくてもOK。ただし電源スイッチのOFFだけでなくコンセントを抜く。

  2. クーラーのネジを対角線順に少しずつ緩める
    片側だけ一気に外すとCPUとクーラーが斜めに外れてCPUピンを曲げる恐れがあります。対角順に少しずつ緩めてから取り外してください。

  3. 古いグリスをキムワイプで拭き取る
    乾いたキムワイプで大まかに拭き、その後無水エタノールを少量含ませて円を描くように拭き取ります。IHSとクーラーベースの両方をきれいにしてください。ティッシュペーパーは繊維が残るためNG。キムワイプかコーヒーフィルターを使う。

  4. IHSの表面が乾いたことを確認する
    エタノールが残った状態でグリスを塗ると密着が悪くなります。30秒ほど待てば完全に揮発します。

  5. CPUのIHS中央にグリスを置く
    米粒法なら米粒〜大豆粒大をIHSの中央に1点。量が少なすぎるとCPU端まで届かない場合があるため、IHSのサイズに応じて微調整してください。

  6. クーラーを真上から押し付け、対角順にネジを締める
    ズラしながら押し付けるとグリスが偏ります。真上から押し付けた状態で保ちながら、対角順に少しずつネジを締めてください。締め付けトルクは「固い」と感じてから1/4回転が目安です。

  7. 起動して温度を確認する
    HWiNFO64またはMSI Afterburnerでアイドル時・フルロード時の温度を確認します。下記の目安を参照してください。温度が高い場合は量が少ない可能性があるため、クーラーを外して塗り直してください。

温度で判断するグリスの適否

状態アイドル時ゲーム・高負荷時判定
問題なし30〜45℃65〜80℃快適
要注意50〜60℃85〜89℃様子見
塗り直し推奨65℃以上90℃以上が続く改善が必要

90℃を超えるとCPUが自動的にクロックを下げるサーマルスロットリングが発生し、ゲームのfpsが突然落ち込みます。アイドルから温度が高い場合はグリスの量が少ないか、クーラーの固定が緩い可能性があります。

Ryzen 7 9800X3Dは高温が正常
9800X3DはV-Cacheの構造上TjMax(最大動作温度)が比較的低く設定されており、ゲーム中に85〜90℃台で動作することがあります。これは設計通りの動作なので慌てる必要はありません。ただしアイドル時に65℃を超える場合は取り付けを見直してください。

グリスを交換するタイミング

以下のいずれかに当てはまったら塗り直してください。

  • クーラーを取り外したとき
    一度外したグリスは密着が不均一になるため、再装着のたびに必ず塗り直してください。これは絶対ルールです。

  • 3年以上経過しているとき
    グリスは時間とともに固化・乾燥し熱伝導率が下がります。PC内部の清掃(エアダスター)と合わせて定期交換するのが理想です。

  • アイドル温度が以前より10℃以上高くなったとき
    グリス劣化の典型的なサインです。クーラーの固定ネジが緩んでいないかも同時に確認してください。

  • ゲーム中にサーマルスロットリングが頻発するようになったとき
    突然fpsが落ちてCPU温度が90℃を超えている場合、グリスの塗り直しで解消することがあります。

やってはいけないNGパターン

  • 大量に塗る
    「多い方が冷える」は誤解です。グリスが多すぎるとクーラー装着時にはみ出し、CPUソケットやマザーボードを汚します。熱伝導率も均一に下がります。米粒大が正解です。

  • 指で伸ばす
    皮脂や水分が混入し、熱伝導率が下がります。塗り広げる場合はプラスチックカードや付属のヘラを使ってください。

  • 古いグリスの上から重ね塗り
    古いグリスが残った状態で上塗りしても密着性は改善されません。必ず古いグリスをきれいに拭き取ってから塗り直してください。

  • クーラーを横にズラして押し付ける
    グリスを「伸ばそう」としてクーラーを横にスライドさせると、気泡が入りグリスが偏ります。クーラーは必ず真上から押し付けてください。

  • 液体金属を通常のCPUに使う
    液体金属(Conductonautなど)をニッケルメッキなしのIHSや、AlderLake以降のIntel CPUに使うと腐食を起こします。また、電気を通すためソケット周辺に付着すると即故障です。使う場合は対応モデルを必ず確認してください。

まとめ

グリス選びで迷ったらArctic MX-4、性能を少し上げたいならThermal Grizzly KryonautかNoctua NT-H2が答えです。塗り方は米粒法+真上から押し付けるだけで、量さえ間違えなければ難しい作業ではありません。アイドルでも65℃を超えていたり、ゲーム中に90℃が続くようなら塗り直しを試してみてください。クーラー自体に問題がなければ、グリスの塗り直しだけで10〜15℃下がることは珍しくありません。

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