Intel Nova Lake「bLLC」解説——144MBキャッシュでRyzen X3Dのゲーミング王座を奪えるか
144MB / 288MBでRyzen X3Dに挑む
最大bLLC容量
(Intel社内資料・リーク)
(遅延の可能性あり)
- IntelはNova Lake(Core Ultra 400シリーズ)のKシリーズモデルに「bLLC」という大容量キャッシュを搭載します。シングルタイル構成で144MB、デュアルタイルのフラッグシップでは288MBに達し、AMD 3D V-Cacheと同容量の対決を狙った設計です。
- bLLCはAMDの積層(垂直)方式ではなく、コンピュートタイル内のシリコンを水平方向に拡張する独自方式を採用しています。ダイを積み重ねないため発熱とクロック低下を避けられる可能性がある一方、ダイサイズが36%増加することでコスト上昇と高い消費電力(PL4最大700W)が懸念されます。
- ゲーミング性能はArrow Lake比+30〜45%(bLLC版)のリーク数値が出ていますが、Zen 6 X3Dが同様の288MBキャッシュで対抗する見込みのため「ゲーミング王座奪還」には50%以上の改善が必要とも言われています。発売時期も公式は2026年末ながら、CES 2027への遅延を報じるメディアもあります。
目次
bLLCとは何か——AMDの3D V-Cacheへの回答
AMDが「3D V-Cache」でゲーミング性能の主導権を握って以来、Intelはキャッシュ競争で後手に回ってきました。Zen 4世代の7800X3D(96MB)、Zen 5世代の9800X3D(96MB)、9950X3D(128MB)と、AMDはV-Cacheを洗練させ続けています。Nova Lakeに搭載されるbLLC(Big Last Level Cache)はそれに対するIntelの明確な回答です。
水平拡張方式の最大の利点は、ダイを重ねないためキャッシュダイが放熱を妨げないことです。AMD 3D V-Cacheの初代(Zen 4世代・7800X3D)はキャッシュダイが蓋になって放熱効率が落ちることが批判を受け、AMD自身が改良を重ねてきた課題でした。IntelのbLLC設計はそのトレードオフをある程度回避できる可能性があります。ただし、ダイが横に広がる分だけシリコン面積が増え、コストと製造歩留まりに影響します。
Nova Lake bLLC スペック一覧(判明分)
| モデルグレード | コア構成 | bLLC容量 | タイル構成 | bLLC |
|---|---|---|---|---|
| Core Ultra 9(最上位) | 16P + 32E + 4LP-E = 52コア | 288MB | デュアルタイル | あり |
| Core Ultra 9 | 14P + 24E + 4LP-E = 42コア | 288MB | デュアルタイル | あり |
| Core Ultra 7 | 8P + 16E + 4LP-E = 28コア | 144MB | シングルタイル | あり |
| Core Ultra 7 | 8P + 12E + 4LP-E = 24コア | 144MB | シングルタイル | あり |
| Core Ultra 9/7/5(非K版) | 最大48コア | なし | デュアル/シングル | なし |
| ※bLLCはKシリーズ(アンロック版)のみ搭載。非K版はbLLCなし・1四半期遅れでの登場とも報告されている | ||||
ゲーミング性能予測——本当に9800X3Dを超えられるか
リークされたIntel社内資料では、bLLC搭載Nova LakeはArrow Lake比でゲーミング+30〜45%の向上を主張しています。これが現実になるなら、現在のRyzen 7 9800X3Dに迫るか超える水準になります。しかし、この数字をそのまま信じるのは早計です。
重要なのは「+30〜45%」という数字の基点です。仮にArrow Lake(270K Plus)のゲーミング性能を基準にすると、現在270K Plusは9800X3Dに約20%負けています。そこから+30〜45%向上すれば9800X3Dに並ぶか超えられる計算になりますが、これはリーク値を最大限楽観的に読んだシナリオです。インサイダー情報では「Intel が Zen 6 X3D を上回るには50%以上の改善が必要だが、ほぼ不可能」という冷静な見方も出ています。
Zen 6 X3D との「288MB対決」——同容量でどちらが勝つか
懸念点——期待と同時に知っておくべきこと
今どうするか——買い時の判断軸
- Nova Lakeの発売が遅延した場合、1〜1.5年待つことになる
- 250K Plus($199)は現時点での$199帯では突出したコスパ
- 270K Plus($299)はゲーム+生産性のバランスCPUとして今すぐ有効
- 純粋なゲーミング最強が必要なら9800X3D($480)が現状の正解
- 2026年末〜2027年初頭にかけて登場予定(遅延リスクあり)
- bLLC版はゲーミングで9800X3Dを超える可能性がある
- LGA1954は長期サポートの見通しがあり、プラットフォーム投資として安心感あり
- ただし発売時の価格・実性能が未知数。「思ったほど差がない」リスクも
bLLCはIntelが「キャッシュ競争でAMDと正面から戦う」という意思表示です。144MB/288MBという容量、水平拡張という独自方式、AMD X3Dと同容量での対決構図——これほどゲーミングに特化した構想をIntelが持つのは、3D V-CacheにゲーミングCPUの主導権を奪われた反省の表れでしょう。
ただし現時点では「リーク」と「予測」の段階です。Arrow Lake発売時に発覚した「ソフトウェア未完成によるパフォーマンスロス」のような問題が再び起きないとは言えませんし、TSMC N2採用による価格上昇と700W問題は実用面で無視できません。そして何より、AMDのZen 6 X3Dも288MBで対抗してくる見込みです。
Nova Lakeは「Intelが復活できる候補」であり、「確定した勝利」ではありません。2026年末の発売を待ち、実際のレビューが出てから最終判断するのが最も賢い選択です。それまでの間、$199の250K Plusや$299の270K Plusは今すぐ手堅く使えるCPUとして選択肢に入ります。